上場した後で成長が止まってしまうスタートアップが抱える問題とは? M&Aで成長戦略を描くために必要なこと

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スタートアップの成功は新規株式公開(IPO)だと言う人もいる。

起業して仲間を集め、ベンチャーキャピタル(VC)から資金を調達し、自らのアイデアを事業化して売り上げも伸ばした。そして東京証券取引所で上場の鐘を鳴らすことができたとしたら、どうだろう。

ここまで行けば上々の出来で、生態系の勝ち組と言っても良いかもしれない。

だが、東証グロース市場に上場したスタートアップの株価と業績は、芳しくない。

東証はグロース市場を「高い成長可能性を有する企業向けの市場」と定義しているが、この市場に上場した企業の半数程度が、上場時の時価総額を下回っている。

スケールアップを果たした先行事例に学ぶ

スタートアップにとって、IPOは大きなマイルストーンではあるが、実際は上場したときがいちばん良かったという企業も多い。

つまり上場時をピークに成長が止まってしまっているのだ。なぜ、そんなことになるのだろうか。

筆者の考える起業の成功とは、起業家が生み出した製品やサービス、仕組みが世の中に認められて、その実装が社会的課題の解決につながっていくこと、そして、その成果の対価として彼らが創業者利益を得ることだ。IPOは、そこに至るプロセスに過ぎない。

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起業家、そして、スタートアップとの共創を目指す方々に、次の3つのことを伝えたい。

ひとつ目として、投資家目線の成長ステージと起業家目線の成長ステージは違うということだ。スタートアップ界隈でよく耳にする、シードからレイターといった成長ステージは、あくまで投資家目線のものに過ぎない。

次に2つ目として、VC退出後のスケールアップの方法について、M&Aを活用した2つのアプローチを伝えたい。ひとつは、自社の製品やサービスを補完する事業の買収を繰り返して拡張していくリード型スタートアップだ。

もうひとつは、M&Aで他社のグループに入り(ジョインして)、他社の経営資源を活用して高成長を目指すジョイン型スタートアップだ。

起業家が自社はリード型か、あるいはジョイン型かを見極める素材を提供したい。

そして3つ目として、日本のスタートアップM&Aで先行する企業のケーススタディと、その成長のダイナミズムを紹介したい。

先に、スタートアップの株価と業績は上場したときがいちばん良かったという事例が多くあること、その背景には、日本にはIPOをゴールとしてしまう、すなわちそこで成長が止まってしまう構造があると述べた。

この構造を打破することは、企業の成長にとってだけでなく、日本経済にとっても大事なことだ。

起業家は、上場後の停滞から抜け出し、どうスケールアップを実現すればいいだろうか。本書では、その解をM&Aの可能性から探っていきたい。

松本 茂 京都大学経営管理大学院特命教授、城西国際大学大学院教授

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まつもと しげる / Shigeru Matsumoto

神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。PwCディレクター、英HSBC投資銀行本部長、同志社大学大学院准教授などを経て、現職。20年にわたり、M&Aアドバイザーとして、米国や中国など20カ国、50を超える海外企業とのクロスボーダー案件に助言。著書に『海外企業買収 失敗の本質 戦略的アプローチ』(東洋経済新報社、2014年、第9回M&Aフォーラム賞正賞「RECOF賞」受賞)。『海外M&A 新結合の経営戦略』(東洋経済新報社、2021年、第16回M&Aフォーラム賞奨励賞「RECOF奨励賞」受賞)。2020年と2024年に、京都大学経営管理大学院より優秀教育賞受賞。

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