冬の足音が聞こえる季節、本人が出してきた出願志望大学は、全て、本人の偏差値よりも高いところだった。特に中央大学合格は今の淳さんにとってはかなりのチャレンジ。
だが、これは塾講師との面談の末に淳さんが決めたもので「受かったら、めっちゃテンションが上がる大学」だから。本命大学よりも上の偏差値帯を第1志望に据えることで、本命大学の合格を確実なものにしようという戦略だった。
淳さんが出願大学に決めたのは中央大学のほかに日本大学、東洋大学、國學院大學、二松学舎大学、武蔵野大学。しかし、親は心配だ。受験にチャレンジするのは悪いことではない。けれど、母親の目には、淳さんが意地を張っているように見えた。大学だけが人生のすべてではない。もっと広い視野で自分の可能性を信じてほしいのに……。
「経済的なこともありました。浪人はさせてやれないと思っていたので、受かるところに行ったらいいのにという気持ちもありました」(母親)
A判定が取れそうな安全校を1つは入れてほしいと思い、何度も本人の説得を試みたが、言えばいうほど、淳さんは反発した。
「僕は勉強が苦手で、それがコンプレックスなんだ。日東駒専以上の大学に受かって、自分もやればできるって自信をつけたいんだ!そんな時に、大学だけが人生じゃないとか言われても全然響かないし、腹が立つだけだ!」
結局、母親が折れた。
大学入試は複雑なパズル
そこからは、他の家庭同様に出願に向けてのサポートが始まった。
淳さんは大学受験に向けて自分なりに戦略を立てていた。とにかく、これまでの勉強の積み上げが弱かった淳さんは、まんべんなく勉強をしていたのではどの教科も中途半端になる可能性があった。
出願は私立文系大学のみ。文理の選択だけでなく、早い段階から漢文を諦めるなど、勉強する教科を絞り、少ない科目で出願できる大学を目指すことにした。
共通テスト利用型の出願もしたが、こちらは淳さんが本命として受ける大学を滑り止めとして受験する層も多いため、かなり厳しい。勝機があるとすれば、各大学が独自に行っている一般入試だった。
いずれも偏差値はギリギリか、届かないところばかりで、模試の判定もE判定だが、淳さんはあまり気にしていない様子。模試ではなく、各大学の入試との相性で考えていた。中央大学の総合政策学部は2教科方式があり、国語ができる淳さんにとってはチャンスがある。二松学舎は漢文がない上、国語の配点が高い。
出願したい大学と学部名を聞いた母親は、早速スケジュールを立てていった。これまでこの連載に登場した家庭の保護者同様に、日程表を前に、パズルのようにはめていった。入試はあまり連続になると、体力が持たない。塾からも「やっても連続3日まで」と聞いていたため、そこも加味しなければならない。
「入試形態や日程の関係で、受けたい大学を全部受けることができないので、どこを受けてどこをやめるかを決めるので随分悩みました。
毎日のように本人の考えも変わりますし、そのたびに、その大学の受験要項(出願料や併願の条件、試験科目の内容、受かった時の手続きの期限など諸々の情報)を調べ直して、本人の考えの通りにできるのかを確認して、何度もスケジュールを変更したので、本当に大変でした」(母親)
本人が出してきた大学だけでは不安だった母親は、どうしても、亜細亜大学だけは受けてくれと頼み、表に加えた。



















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