「会社がなくなって、いろいろなものを失ったけれど…」。アラフォー男性が団地の"ひとり暮らし"で見つけた居場所

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打ちっぱなしの壁にフローリングの部屋はいかにも昭和の団地風な外観とはギャップがある。DIYが可能ということで、くまがいさんも壁に釘を打って絵を飾るなど、自分流に暮らしを彩っていた。

子どもたちがワークショップで作ったアート
地域の子どもたちがワークショップで作ったアートを飾る(撮影:梅谷秀司)

全体的に物が多く、キッチンには調味料や食器が、ベッドサイドには洋服類があふれている。そして部屋の端には、なぜか業務用の巨大な冷蔵ケースがあった。

巨大な冷蔵庫
鎮座する巨大な冷蔵庫(撮影:梅谷秀司)

「冷蔵ケースは、知り合いの飲食店の人から不用品を譲ってもらったんです。いつか団地のイベントで使えるかなと。

部屋は普段からこんな感じです。取材だからって、掃除し過ぎるのもかっこ悪い気がして。だって、普通の暮らしってこんなもんでしょう? 『愛のままに、あるがままに』が、僕の会社のビジョンでもあるので」(くまがいさん 以下の発言すべて)

そう言ってニコニコと笑う。

地域にロマンを振りまく“コミュ力お化け”

写真を撮影している間にも、彼はおしゃべりだ。最近ギターを始めたこと、すでに来月ライブの予定があること、YouTubeで見る「ちいかわ」のアニメにはまっていること、自転車の簡単なメンテナンスをボランティアでしていること……。

いろいろな方向からの脈絡のない会話のようでいて、こちらがひっかかるポイントを探している。それは多様な人々とのコミュニティづくりを生業とする人特有の、会話術なのかもしれない。

くまがいけんすけさん
くまがい けんすけ(41歳)場づくりカンパニー「ソーシャルロマンティック」代表取締役。2018年から24年まで、コミュニティ事業を行う企業、はじまり商店街の共同代表取締役を務めた。同社が親会社に吸収合併された後、現在の会社を立ち上げる。現在は東京都足立区の団地「いろどりの杜」でひとり暮らし。また同団地のコミュニティづくりにも伴走している Instagram(@kumakumakenken)(撮影:梅谷秀司)

「そういえば、この前ボランティアで自転車を修理したら、お礼にって柿をくれたんですよ。お裾分け、どうぞ持って帰ってください!」とつやつやとした柿を差し出す。

「随分とフレンドリーなんですね」と驚く私に、くまがいさんは「この団地を起点にして、足立区にロマンティックを循環させることが、僕の仕事ですから」と、胸を張った。

彼によるとロマンティックとは「直接的な愛とは違うなにか」であり、「あまねく人が持っているもの」なのだそうだ。それは特定の誰かへの愛ではなく、人と人がつながる余地。そこから立ち上がって来る「なにか」を、信じる感覚なのかもしれない。

立派な柿
立派な柿は、自転車修理のお礼としてもらったもの(撮影:梅谷秀司)
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