打ちっぱなしの壁にフローリングの部屋はいかにも昭和の団地風な外観とはギャップがある。DIYが可能ということで、くまがいさんも壁に釘を打って絵を飾るなど、自分流に暮らしを彩っていた。
全体的に物が多く、キッチンには調味料や食器が、ベッドサイドには洋服類があふれている。そして部屋の端には、なぜか業務用の巨大な冷蔵ケースがあった。
「冷蔵ケースは、知り合いの飲食店の人から不用品を譲ってもらったんです。いつか団地のイベントで使えるかなと。
部屋は普段からこんな感じです。取材だからって、掃除し過ぎるのもかっこ悪い気がして。だって、普通の暮らしってこんなもんでしょう? 『愛のままに、あるがままに』が、僕の会社のビジョンでもあるので」(くまがいさん 以下の発言すべて)
そう言ってニコニコと笑う。
地域にロマンを振りまく“コミュ力お化け”
写真を撮影している間にも、彼はおしゃべりだ。最近ギターを始めたこと、すでに来月ライブの予定があること、YouTubeで見る「ちいかわ」のアニメにはまっていること、自転車の簡単なメンテナンスをボランティアでしていること……。
いろいろな方向からの脈絡のない会話のようでいて、こちらがひっかかるポイントを探している。それは多様な人々とのコミュニティづくりを生業とする人特有の、会話術なのかもしれない。
「そういえば、この前ボランティアで自転車を修理したら、お礼にって柿をくれたんですよ。お裾分け、どうぞ持って帰ってください!」とつやつやとした柿を差し出す。
「随分とフレンドリーなんですね」と驚く私に、くまがいさんは「この団地を起点にして、足立区にロマンティックを循環させることが、僕の仕事ですから」と、胸を張った。
彼によるとロマンティックとは「直接的な愛とは違うなにか」であり、「あまねく人が持っているもの」なのだそうだ。それは特定の誰かへの愛ではなく、人と人がつながる余地。そこから立ち上がって来る「なにか」を、信じる感覚なのかもしれない。



















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