なぜ「立派なパーパス」を掲げる組織ほど停滞するのか?メンバーの自律性を引き出すマネジメント術
筆者も、かつて経営したAIスタートアップで「イノベーションこそ至上」という純粋な想いを掲げ、失敗した経験を持ちます。斬新さを尊ぶ空気が強まるあまり、地道な業務を担うメンバーが「自分たちは価値がない」と疎外感を募らせ、組織は崩壊。優秀な人材が次々と去っていきました。
どんなに素晴らしい理念でも、それが「他者の操作」や「強要」として伝われば、チームは壊れます。ここで必要なのは、理想のリーダーという仮面を脱ぎ、自分勝手な「わがまま」を語ることです。
「I-message」が本物のエンゲージメントを生む
チームに火をつけるのは、リーダー自身の「私はこれがやりたい」「私はこの瞬間が一番楽しい」という主語を明確にした本音(I-message)です。命令ではない生々しい欲望の開示は、聞き手の心に「この人の気持ちは本物だ」という共感を生み、心理的安全性のファーストシグナルとなります。
本書『マネジメントの原点』では、個人の欲望をチームのゴールへ変換する翻訳の技術を提案しています。
①聴き切る
相手の不満や欲望をジャッジせずに最後まで聴く。
②事実・恐怖・欲望に分ける
「給料が低い」という不満の裏にある「実力不足がバレるのが怖い(恐怖)」「正当に認められたい(欲望)」を整理する。
③価値に翻訳する
個人の欲望を「We(チームの価値)」、さらに「Stakeholders(顧客・社会への価値)」へとつなぎ直す。
「もっと評価されたい」「ラクをして稼ぎたい」。そんな下世話とも思える欲望をあえて認め合い、共通の座標軸に乗せる。そのとき、KPIやOKRは無機質な数字ではなく、全員が当事者として握り合う「生きたストーリー」へと変わります。
マネジメントの本質は、超人的なリーダーシップを発揮することではありません。自分とメンバーの「本音」を起点に、操作や忖度のない健全な合意を積み重ねていく技術にこそ、組織の停滞を打破する鍵があるのです。
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