「おせち料理」食べる?食べない?——。多様化進み、"皿盛りおせち"を少しだけ作る人も。「おせち離れ」物価高の影響は?

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平成時代から、「おせち離れ」を心配する声は多かった。だからこそ、料理メディアは簡単レシピや薄味レシピ、皿盛りといった、ラクになる提案をくり返してきた。家族の人数が減る現状に合わせて、少人数おせちを売る店も増えた。あの手この手で、おせちを食べる「伝統」を守らせようと取り組んできたのである。

しかし、改めて歴史を振り返ると、現代の「おせち離れ」は杞憂かもしれない。皿盛りおせちが実は伝統的な正月料理に近いこと、重箱おせちの歴史が200年余りしかなく、一般化したという意味では100年余りしかないことが分かった。

そして半世紀ほど前から、「飽きやすい」おせちを楽しむために、洋風おせちなどの提案がされてきて、今やすっかり定着している。市販のおせちには、ビュッフェパーティの料理と見まがうオードブルを詰め合わせた料理がたくさんある。

「わが家の雑煮」も多様に

実は人々が長く食べてきた正月料理は、雑煮である。雑煮を食べる習慣は室町時代から始まり、江戸時代には身分に関係なく定着したというのが定説である。

よく知られているように、雑煮は白味噌仕立て、澄まし汁など地域によって味付けも違えば、入れる具材も違う。もちの形も関東は角で関西は丸といった違いがある。雑煮のほうが幅広い人たちに食べ継がれているのではないか。各地の雑煮文化を研究する人もいるし、どんな雑煮を食べるかを語り合って盛り上がる場面もあるなど、関心は高い。

冷たいままいただくおせちと異なり、雑煮は常にあたたかい状態で提供される。そして、その味がわが家のもの、地元のものと多くの人は知っている。親や祖父母などから「わが家の雑煮」について語り聞かせられた人も多そうだ。

出身地が異なるカップルが増えたこの数十年、「わが家流」のアレンジをした家庭も多く、そうした独自の雑煮が家族の歴史を紡いでいる場合もある。その子どもたちが成長し、また新たな味を採り入れることもある。多様性をそもそも含んだ行事食だという側面も、雑煮を栄えさせているのではないか。

ノスタルジーと誰かの理想に縛られ、現実を見失いがちな私たちだからこそ、正月の何が変わり、何が変わらないのか。そしてその理由は何か。しっかりと見定める必要があるのではないだろうか。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。

女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『おいしい食の流行史』(青幻舎)『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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