「おせち料理」食べる?食べない?——。多様化進み、"皿盛りおせち"を少しだけ作る人も。「おせち離れ」物価高の影響は?

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ほかにも各社が、おせちに関するアンケート結果を公表しているが、だいたい同じような結果だ。ネガティブな声を集めてみると、やはりおせちを食べる習慣は廃れつつあるのではないかと思える。そしてほぼ、どのアンケートでも不満の多数派は作る手間とコストである。

おせちは一般的に、一の重に黒豆に数の子など、二の重に焼き物や酢の物、三の重に煮物といった決まりがあるが、地域や家庭によってその決まり事にも違いがある。

『日本の食文化①食事と作法』(小川直之編)によると、数の子や煮豆、昆布巻き、ごまめ、たたきごぼうなどを重箱に詰める形は江戸時代に武家で始まったもので、20世紀になって『婦人之友』などの女性誌が現在の定型を広めた。

三が日に料理しない、という前提があり、冷蔵庫がない当時の一般家庭で保存性を高めるためもあって、味つけが濃くなったと言われている(諸説あり)。

しかし、時代は変わり、今は自分たちの好みに合わせて味付けを薄めにする人もいるだろうし、薄味のレシピを提案する料理家もいる。しかし、伝統行事の定番イメージを変えるのが難しいからと、薄味のアレンジが敬遠される側面もありそうだ。

おせちの簡略化は今に始まった話ではない

働く女性が増えているのだから、手間を減らしたい潮流も出てくるのは当然と言える。

おせちは家で作らず、百貨店やレストランなどで購入する、という選択肢は豊富にある。少人数家族の増加や大勢で集まらなくなった傾向もあり、少人数用のおせちも人気。洋風や中華風など、アレンジされたおせちもすっかり定着した。

手作りする場合も量を減らす、時短レシピにするといった簡略化のノウハウが提供されている。

実は、おせちの簡略化はすでに昭和時代から始まっていた。例えば1970年の『主婦の友』1月号は、早くも皿盛りの「ビュッフェスタイルの盛り合わせ」を提案していた。また、「ボリューム本位の洋風おせち」は、エビフライや富士山の形に盛りつけたポテトサラダなどを紹介している。

75年の『きょうの料理』テキスト12月号の正月特集も、「最近はお正月料理も市販品を買って、それに手作りのものを添えるといった人が多くなりました」という文章で始まっている。手作りを推奨しつつ、「最近は、お正月の三が日を過ぎると、おせち料理も少しうんざりという方も多いようです」という説明もある。

70年代といえば、ハウス食品の「ククレカレー」の「おせちもいいけどカレーもね」と語るCMが開始されたのが76年だ。「おせちに飽きた」人が増加して、すでに半世紀も経っていることになる。この頃は洋食・中華が家庭に定着し、和食が敬遠されるスタート地点。2世代分の時間が流れた今、「おせちを食べる習慣がない」人が2割前後いてもおかしくない。

これからもおせちはどんどん廃れていってしまうのだろうか? 共働き家庭が主流になり、シングル化が進んだ影響もあるのか、そもそも家庭で料理をしない人も増えているし、家族が一緒に同じものを食べるとは限らない現状もあり、おせちの行方が気になる。

食の話題にも詳しいジャーナリストの佐々木俊尚氏は、音声プラットフォーム「Voicy」で12月7日、「わが家のおせちは元旦の『儀式』としてのみある」という題で放送を配信していた。三が日だろうとお店も開いているので、おせちを作り置く意味もないとはいえ、新年を迎える「通過儀礼としてのおせちには意味があると思っている」と語る。

「だから大量に作らない」として、毎年、黒豆や紅白なますなど4種類のみ、1回か2回で食べられる分だけ作るそうだ。これらは当然お重ではなく、皿に盛って「まるで儀式のように食べる」という。

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