歩み寄った台湾総統、波紋呼ぶ「1つの中国」 交錯する中台の思惑はどこへ向かうのか

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ところが、中国が台湾を「1つの主体」として認めることにつながるかといえば、それは絶対にないだろう。

今回の会談ではっきりしたのは「1つの中国=中華人民共和国」ということであり、馬総統もこれを強く否定するどころか、逆に際立たせてしまった。

誰も「1つの中国=中華民国」とは思わない。1912年に誕生した中華民国は、結果的に存在感を一段と弱めることになった。

中国と台湾の関係はどうなる?

台湾では、総統選が近づけば近づくほど中国との関係をどうするかが焦点となってくる。その点で、民進党も現状にあぐらをかいてはいられない。前回2012年の総統選では、対中政策をしっかりとアピールできなかったことが敗因とされたほどである。

民進党の蔡候補は現在、中国との関係性については「現状維持」と述べるにとどめている。国民党との政策面での差別化と中間層の取り込みを狙ったものだ。

だが、この姿勢には、独立志向の強いコアな民進党支持者から不満が出ている。総統選当日は立法院委員(国会議員に相当)選挙も行われる。総統選に勝っても、不満を持つ支持者が他党へ流れ、委員選では苦戦するかもしれない、との見方も出てきた。そうなれば、政治的膠着は必至だ。

何をするにも中国という存在がのしかかる台湾。歴史的な首脳会談も、こうした状況を変える力はなさそうだ。

「週刊東洋経済」2015年11月21日号<16日発売>「核心リポート04」を転載)

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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