歩み寄った台湾総統、波紋呼ぶ「1つの中国」 交錯する中台の思惑はどこへ向かうのか

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今回の会談後、台湾のNGO(非政府組織)である両岸政策協会が実施した世論調査では、「会談に満足」との回答が39.6%、「不満足」が48.5%だった。また「馬総統が中華民国(台湾)の主権と利益を擁護しているか」との質問には、46.8%が「そう思わない」と回答した。

馬総統は執念の末、初の中台首脳会談を実現させた

習主席は「中華民族の復興」との言葉も口にしたが、「中華民族という意識が希薄な台湾人、特に若い世代は、習主席の発言に嫌悪感しか湧かない」(台湾人ジャーナリストの楊虔豪氏)。

2016年1月に総統選挙を控える台湾。現状では最大野党の民主進歩党(民進党)の蔡英文候補が優勢を維持している。

会談直後に地元のテレビ局が実施した世論調査では、蔡候補の支持率が46.7%と前回10月中旬の調査から約5ポイント上昇したのに対し、中国国民党の朱立倫候補は19.0%とわずかに下げた。首脳会談による追い風は、国民党に吹かなかったようだ。

国民党の独り相撲

会談の中で何度も言及され、「中台間の基礎」とされた92共識だが、台湾では非常に認識が希薄だ。「台湾人の5人のうち4人は、その中身を知らないはず」(前出の楊氏)とまでいわれる。

そもそも台湾では、これが本当に「中台双方のコンセンサス」だったのか、議論されてきた。1992年当時に総統だった李氏は「聞いたことがない。合意なき合意だ」と断言。「台湾は台湾、中国は中国にしようと言っただけで、1つの中国などとは言っていない」と証言している。

馬総統が属する国民党には、92共識を通じて「1つの主体」(=中国)を台湾が認め、それを基に中国と台湾の違いを互いが否定しないようにしながら、中台関係を維持していこうという考えがあった。

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