以前は豚骨スープを寸胴鍋で半日以上かけて炊いていたが、現在は約70分で抽出できる特注設備を開発した。「焦げついた鍋を洗うのに手間がかかる」というスタッフの声が出発点だったという。チャーシューを均一にカットする機械も同社専用のオーダーメイドだ。「上から材料を入れて、下からスープを取る仕組み。掃除も楽で、本当にいい設備なんですよ」と、笑顔を見せる。
営業統括部長の野村一美さんは、社長の姿勢をこう語る。
「社長は現場の工程を見て、『ここに無駄がある』とすぐに指摘するんです。作業の順番を変えるだけで、品質も生産性も上がる。その視点が徹底しています」
どんどん競合が減っていく
“作業を減らし、品質と回転を両立させる仕組み”は、実際の業績にも表れている。一杯290円を貫くはかたやの業績はコロナ禍以降、右肩上がりだという。
はかたや堅粕店は、コロナ禍前には月商800万円ほどの店だった。それがコロナ明けには1000万円を超え、翌年には1200万円、そして2025年8月にはついに1400万円へ。
4年間でおよそ1.7倍。低価格帯のラーメン店としては異例の伸びだ。
単純計算で1日に1600杯ほど売れていることになる。昼夜問わず客が途切れず、食べ終わるたびに次の客が席に滑り込む光景が目に浮かぶ。売り上げが伸びた理由を聞くと、意外な答えが返ってきた。
「うちは何も変えていない。競合がどんどん減っているだけなんです」
原材料費高騰によって他社が値上げに踏み切るなか、はかたやは290円を維持している。値上げで離れた客がはかたやに流れ込む。
「原価は上がっても、客数が増えれば売り上げが伸び、利益は積み上がる」
290円の裏側には、シンプルな答えがあった。



















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