夫も復帰後の職場や生活サイクルに慣れるまである程度時間を要し、ますます長時間勤務が加速して育児をする余裕がない、という悪循環が生まれる。また、夫の育休期間が長ければ長いほど、復帰後のギャップも大きくなりやすい。
「結局、うちの家庭の場合も育休を長く取るより、その時の必要に応じて細切れで僕が休むようにしたほうが妻のニーズには合っていたんです。なので、部下が育休を取ろうとしている時も『なんのために休みを取るのか、奥さんとはあらかじめすり合わせをしたうえで決めたほうがいいよ』とアドバイスをする時もあります」
まだ休暇制度が十分に整っていない企業も、男性が育休を取得しづらい文化が残る職場もあるだろう。しかし必ずしも誰もが長い育休を取る必要はなく、家庭内の状況に応じて職場の休暇制度をうまく利用することで、家事も育児も夫婦で分担して回していくことは十分可能になる。
「明日死んでもいい」から「長生きしたい」へ
しかしながら、なぜ幡生さんはここまで育児にコミットできるのだろう。以前社内で受けた育児セミナーで「育児はヘルプじゃない、シェアだ」という言葉に出合い、衝撃を受けたというのも大きい(前編でも紹介)が、同じセミナーを受講したすべての人が同じように感じるとは限らない。また、頭では理解していても、なかなかここまで徹底して行動に移せる人も多くはないのではないか。
元々子どもが好きだったのかと尋ねると「そういうわけでもなくて、子どもができて自然にそうなっていった感じです。むしろ、昔からの知り合いには『キャラ変したね』と驚かれるほど。昔はもっと自分のことだけを考えて生きていた。明日死んでもいいと言えるような生き方をしていました。今は逆に1秒でも長生きしたいと思っています(笑)」。
明日死んでもいいように、と1秒でも長生きしたい、という言葉は、真逆のようでいて共通点を感じる。それは「今この瞬間を全力で楽しみたい、後悔したくない」という思いだ。幡生さんの生き方の本質は変わっておらず、優先順位が自分から家族へと変化したのだ。
「そこはやっぱりシニアだからじゃないでしょうか。若い頃に育児をしていたら、僕も育児より仕事や趣味を優先していたかもしれない。でも、下の子が20歳の時に僕は70歳。そう考えると今そばにいられるうちに、貴重な姿や成長を見ておきたいと強く感じるからじゃないですかね」



















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