患者の家族が急死、初めての出産、排泄で失敗…こんなときの「いいケア」とは? 医師や看護師と本気の対話を重ねてたどり着いた"本質"

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医療従事者たちの対話
「いいケアとは何か?」を例に、本質観取の手順をご紹介します(写真:Ushico/PIXTA)
「本質観取」とは、文字通り、物事の“本質”をつかみ取るための思考法です。
たとえば、幸せとは何か? 自由とは何か? 正義とは、愛とは、友情とは、希望とは、よい社会とは、よい教育とは何か? こうした問いに、「なぁるほど、それは確かに本質的だ」と誰もがうなってしまうような考えを見つけ出し、それを言葉に紡いでいくこと。それが本質観取の営みです。
この「本質観取」の実践法について、わかりやすくまとめられているのが、大学教員である苫野一徳氏、岩内章太郎氏、稲垣みどり氏の3者による新刊『本質観取の教科書 みんなの納得を生み出す対話』(集英社新書)です。
今回は、「いいケアとは何か?」を例に、本書に綴られている本質観取の手順をご紹介します。これはかつて、日本終末期ケア協会の主催で、緩和ケアに携わる医師や看護師の方々と本質観取を行った時のテーマです。

(1)問題意識の確認と目線合わせ

対話のはじめに、本質観取をしたい事柄や概念の本質が分かると、いったいどんな意義があるんだろう、何のために自分たちはこの概念の本質観取をするんだろう、ということを、参加者どうしで対話し、目線合わせする時間を設けます。

この時間が十分にないと、自分たちが何のために本質観取をやっているのか、よく分からなくなってしまうことがあります。本質観取なんてただの言葉遊びじゃないかと言われることがたまにあるのですが、それは、この問題意識の確認や共有がちゃんとされていないから起こってしまうことではないかと思います。

また、「本質」というのは絶対に正しい真理のことではありません。「『本質』は、決して〝どこかにあらかじめ存在しているイデアのようなもの」ではなく、「それを問うがわの関心や観点に従って現れてくる『関心(観点)相関的なもの』」なのです。

そしてだからこそ、「ある問題意識から私たちの経験を眺め考察するとき、『どんな人にも共通なこと』かつ『こうとしかいえないこと』を取り出すことができる」のです(『哲学的思考』2005年、408頁)。

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