患者の家族が急死、初めての出産、排泄で失敗…こんなときの「いいケア」とは? 医師や看護師と本気の対話を重ねてたどり着いた"本質"

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ちなみに、具体例を挙げる際には、取り上げるテーマの反対の例、たとえば、「いいケア」の場合なら「よくないケア」の事例を挙げるのもありです。そうすれば逆説的に「いいケア」の輪郭が見えてくることがあるからです。

「いいケア」の本質観取の際に挙がった事例には、以下のようなものがありました。

「いいケア」の捉え方は“人それぞれ”?

Aさん「自分が看護学生だった時に父が急死したんですが、当時は、医師や看護師はあまり泣いちゃいけないという雰囲気があって、私は葬儀の時にも泣けなかったんです。でも、途中である看護師の方がやってきて、私の背中をずっとさすってくださって。その時、突然ドッと泣けてきたんです。その方は、ただ黙って背中をさすって、一緒に泣いてくれただけだったんですが……私には本当にいいケアでした」

Bさん「それを聞いて思い出したんですが、僕は医者なのに痛がりで、注射とか大嫌いなんです。ある時、胃カメラをやったんですが、自分では何百人にもやってきたのに、やられるのが怖くて怖くて、涙も出てきて。

そんな時に、看護師さんがずっと背中をさすってくれたのが、本当にありがたくて。あれはいいケアだと思いました。ただ背中をさすってくれた。さっきの話と同じで、言葉もなく。むしろ、余計な言葉がないのがよかったなとも思いました」

Cさん「私はクラシックギターを弾くんですが、緩和ケア病棟の患者さんにその話をしたら、部屋で演奏してほしいと言われて。お元気でいられる時間に限りがあったので、早く演奏に伺えるようにと、一生懸命練習をして、弾きにいきました。

患者さんはとても喜んでくださったんですが、あとで、あれは自分ではいいケアをしているつもりだったけど、じつは自己満足じゃなかったかと悩んだんです。いいケアと自己満足の違いは何なのかなと思います」

Dさん「数年前に出産をしたんですが、自分は医師だけど、出産は初めての経験だから、分からないことがたくさんあって。赤ちゃんがなかなか母乳を吸ってくれなかったんですね。体重も減っていって、このまま家に帰っていいのかな、ミルクとか飲ませていいのかなと思って、相談したんです。

そうしたら、この病院は母乳育児推奨って知ってますかと怒られて。はい、知ってます、とは答えたんですけど、ちょっとメンタルが不安定になっていた時に、私の気持ちには寄り添ってもらえなかったな、いいケアをしてもらえなかったなと、その時思いました」

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