「初めて本当の暗闇を味わった」新宿育ちの青年が、能登の被災地で感じたこととは? 地方での体験が都市生活のヒントになる

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高橋:日本はこの点において、周回遅れのような気がします。敗戦国だったので、過去にはすべてを傾けて経済復興に当たる必要がありました。

結果として、世界にミラクルとまで言わしめたのは確かにすごかったと思いますが、当時の日本人はエコノミックアニマル――つまり「経済動物」と呼ばれました。当時から現在に至るまでに何が変わったかと考えると、そうした経済的な価値をさらに偏重して傾倒している気さえするんです。

窪田:私もそう思います。しかも外部環境は当時と大きく変化しているので、そのスタイルではもはや経済的な成長すら見込めなくなっていると思いませんか?

高橋:本当にそのとおりです。管理されていると、環境の変化にも鈍感になってしまうのだと思います。僕はよく都市の生活を、食肉や採卵のために飼われるニワトリに例えています。これらはまさに経済動物なので、「ケージ飼い」という方法でぎゅう詰めにして多くの餌をあたえて、効率よく育てます。

満員電車のような環境に置かれているニワトリは9割を超え、広々としたところで「平飼い」されているニワトリは日本では極々少数です。でもアニマルウェルフェアの発想が広まっているヨーロッパでは、平飼い率が50%を超えています。これ、社会のあり方にそのまま適用されているなと思います。

東京は3700万人が集中する世界最大の都市圏

窪田:さすが、例えが食に関連していて非常にわかりやすいですね。私が暮らしていたアメリカも、日本よりはアニマルウェルフェアの考えがあったように思います。

高橋:ケージ飼いされているニワトリはストレスが多く、病気にもなるので薬代もかかります。ケンカやいじめも多く起こります。人間も同じですよね。東京経済圏は、通勤通学者を含めて3700万人が集中する世界最大の都市圏です。ときどきは、ケージの中のようなこの過密な環境から離れ、広々した地方で走り回って、心身ともにリフレッシュしたらいいと思います。

(構成:鈴木絢子)

高橋 博之 雨風太陽 代表取締役社長

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たかはし ひろゆき / Hiroyuki Takahashi

1974年、岩手県花巻市生まれ。青山学院大学卒。代議士秘書等を経て、2006年岩手県議会議員に初当選。翌年の選挙では2期連続のトップ当選。震災後、復興の最前線に立つため岩手県知事選に出馬するも次点で落選、政界引退。2013年NPO法人東北開墾を立ち上げて「東北食べる通信」を創刊し、編集長に就任。2015年「雨風太陽」を設立。2023年12月、NPOからスタートした企業として日本初の東京証券取引所グロース市場上場を果たす。2024年11月には、内閣官房 新しい地方経済・生活環境創生本部が開催する「新しい地方経済・生活環境創生会議」の有識者構成員に就任。近著に『関係人口 都市と地方を同時並行で生きる』(光文社新書)がある。

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窪田 良 医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

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くぼた りょう / Ryo Kubota

慶應義塾大学医学部卒業。慶應大医学部客員教授、米NASA HRP研究代表者、米シンクタンクNBR理事などを歴任。虎の門病院勤務を経て米ワシントン大学助教授。2002年創薬ベンチャー・アキュセラを創業。2016年窪田製薬ホールディングスを設立し、本社を日本に移転。アキュセラを完全子会社とし、東証マザーズに再上場。「エミクススタト塩酸塩」においてスターガルト病および糖尿病網膜症への適応を目指し、米FDAからの研究費を獲得し研究開発を進めているほか、在宅医療モニタリングデバイスや、ウェアラブル近視デバイスの研究開発を行っている。

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