「下着姿、撮らせてあげなよ」最悪の"いじめっ子"中学2年生女子に迫る「最恐の復讐者」の正体 『子供部屋同盟』6章⑥

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でも登校初日に、自分の心配は杞憂だと気づいた。二学年の生徒は七人だけで、みんな物静かで、どこか牧歌的で、奈央はなんとなく羊の群れを想像した。

そして入校して一週間が過ぎたころに、奈央には友達ができた。倉田君という、坊主頭で素朴な顔立ちの男子だった。人生で初めての男友達だった。

倉田君に勧められて、奈央は軽音部に入ることになった。放課後、彼に連れられて部室を訪れる。青葉丘中学に音楽系の部活は吹奏楽部しかなかったから、部室にエレキギターやらアンプやらが置いてあることに驚いた。

訊けば、中等部で軽音部の生徒は倉田君一人だという。

「一人で、どんな活動をしているの?」

「いや、ぼっちで困ってたんだよ。たまに顧問の亀田ちゃんが、カホン叩いてくれるけどさ」

「倉田君はなんの楽器やってるの?」

「もちろんギターだよ。俺さ、洋次郎さんみたいなギターボーカルになりたかったんだけどさ、残念ながら絶望的に歌が下手なんだよ。なにやっても褒めてくれる婆ちゃんに聴かせたらさ、こりゃあかんわ、お世辞にもうまいとはいえんな、とか言われちゃってさ。でもさ、男女二人組のユニットもいいかなって思ってさ。俺がギター弾くから、楠木さんが歌ってくれればいいと思ってさ」

「わたし、別に歌うまくないけど」

「別にうまい歌が欲しいわけじゃなくてさ、魅力的な歌が欲しいんだ。俺さ、すごく耳がいいんだ。子供のころにピアノ教室に通わされててさ、絶対音感があるとかじゃないけど、とにかく耳はいいんだ。この間さ、音楽の授業で歌の練習があったでしょ。俺さ、あのときあちこち歩き回って、こっそりみんなの歌を聴いてたんだ。俺さ、楠木さんの歌好きだよ」

奈央は自分でもよく分からないが、ぼろぼろと涙が頬を伝っていった。その姿を見て、何かまずいことを言ってしまったのではないかと、倉田君は慌てふためいていた。奈央は両手で涙を拭う。

涙を拭い、演奏が始まる

「大丈夫、目にゴミが入っただけだから」

「そ、そうか、目にゴミが入ったのか……」

「倉田君、ギターは何が弾けるの?」

「スピッツの楓(かえで)のコードなら弾けるよ」

倉田君のあまりうまくないギターに、奈央はハミングでたどたどしくメロディを重ねていく。

高橋 弘希 小説家

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たかはし ひろき / Hiroki Takahashi

小説家。青森県十和田市生まれ。2014年、『指の骨』で第46回新潮新人賞を受賞。2017年、『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』で第39回野間文芸新人賞を受賞。2018年、『送り火』で第159回芥川賞を受賞。他の作品に『朝顔の日』『スイミングスクール』『高橋弘希の徒然日記』『音楽が鳴りやんだら』などがある。

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