例年通り、緑台公園の芝生の広場の中央に、やぐらが建っている。たくさんの提灯が吊るしてあり、周囲をぼんやりと照らしている。
やぐらには、二台の和太鼓が置いてある。南野小の生徒だろう女の子が浴衣の袖をまくって、花笠音頭に合わせてバチを振っていた。
ベッドで聞いた太鼓の響きだ。奈央も二年前までは、あの子と同じように袖をまくって太鼓を叩いていたのだ。
やぐらの周囲では浴衣姿の大人や老人が、曲に合わせて踊っている。奈央と結衣は町内会で太鼓の練習はしているが、踊り方は教わっていない。
だからベンチに座ってコーラを飲みながら、踊る人々を眺めていた。提灯の明かりに照らされて、みんな頬が橙色に染まっていた。地面に伸びた影を引き連れて、やぐらの周囲を時計回りに進んでいく。
「あの人たちは、どこの段階で踊り方を教わったんだろう?」
それはまったくの謎だった。昔は町内会の子供に、踊り方も教えていたのかもしれない。
十四歳の夏の終わりを告げる花火
出店で買ったおばちゃんの焼きそばを食べ終えたころに、数発の花火が打ちあがる。夏祭りの終わりを告げる花火は、十四歳の夏の終わりを告げる花火にも聞こえた。
「年々、花火がしょぼくなってるね」
結衣は夜空を見上げてもらす。
「町内会も資金難なんだよ」
奈央も同じように、夜空を見上げてもらす。
おそらくは最後だろう菊の花火が弾けて、黄金色の火の粉が夜闇に消えていく。そのころになって、ようやく奈央は言う。
「わたし九月から、サポート校に通うことになったんだ。違う学校になるけど、またときどき遊んでね」
未だ夜空を見上げていた結衣は、こちらを見て瞳を丸くした。
「サポート校ってなにするところ?」
「授業を受けたり、部活動をしたり」
「そっか、じゃあ公立とあんま変わらないね」
お腹に響く音が、もう一度遠くから聞こえてきた。
今度こそ最後だろう大玉の牡丹が夜空に弾けて、蛍光色の火花がぱちぱちと音を立てて放射状に広がっていく。
九月初めに登校日を迎えた。
校舎は四階建てのビルで、学校というよりは、学習塾に近い造りだった。奈央はいつかと同じように、額に脂汗を滲ませていた。
この学校にも、木村のような生徒はいるかもしれない。すでに三つくらいの女子グループができているかもしれない。また徒党を組んで、暴力を振るわれるかもしれない。



















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