いくつかのサイトには、復讐代行業者の存在が断片的に示唆されていた。きっとダークウェブの海のどこかに、あの雑誌記事のサイトは実在するに違いない。浩一はあらゆる検索窓に、復讐、復讐、復讐、と打ち込んで調査を続けた。
と、あるとき突如としてブラウザが自動でいくつも開きだした。ウイルスでも踏んだのだろうか、慌ててブラウザを閉じていくも、その途中で浩一の手は止まった。
子供部屋同盟
サイトへ入ると、浩一にはL42番というユーザーネームが与えられた。その先の通信部へ入るとチャットページが開いた。
──ハロー、ハウロウ、こちら通信部のジョン・万次郎。
ジョン・万次郎……? 浩一は『ジョン万次郎漂流記』を読んだことがあり、好きな本の一冊でもあった。戸惑いつつも、チャット欄に文字を打ち込んでいく。
──こちらでは復讐を請け負ってくれるのですか?
──はい、タヒレベルから悪戯レベルまで、幅広く請け負っております。
──ちなみに依頼料はどれくらいなのでしょう?
──いいえ、我々は金銭ではなく、動機を対価としております。
動機なら持っているが…
その一文を見て胸が高鳴った。あのオカルト雑誌に記されていたサイトは、やはり実在したのだ。動機なら持っている。浩一は依頼内容をチャット画面に打ち込む。
──え、本屋の万引き犯を捕まえて欲しい? うーん、まぁ、いちおう動機レポートを送ってもらえますかね?
浩一は宿題もそっちのけで、一晩かけて動機レポートを記して同盟へ送信した。
きっと彼らは悪を成敗してくれる正義のヒーローなんだ。万引き犯もやっつけてくれる。朝日堂書店を救ってくれる。
翌日、学校から帰宅すると、さっそく子供部屋同盟へアクセスした。DM欄に受信通知が届いている。万次郎からの返信だ。
──L42番さんの案件は、我々、子供部屋同盟に否決されました。またの機会によろしくお願いします、アディオス。
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