スキーブーム終焉でも潰れなかった老舗が見つけた「強みの掛け算」

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握る設計についても、長年積み重ねた経験が生きています。グリップ部分の握りやすさがスキーポールの使いやすさを大きく左右しますから、どのような素材でどんなサイズのグリップを作れば手・指にフィットするのか、私たちはずっと研究してきました。

これら3要素が、シナノが胸を張って誇れるコア技術です。

ただし、これらはいずれも「オンリーワン」と言えるものではありません。

例えばアルマイト加工の技術では、アルマイト工場は日本にはたくさんあります。細長い丸いパイプに特化した企業は、それでも国内に数社は存在していると思われます。

つまり、単体では「他社には真似できない核となる能力」にはなり得ないのです。

複数の強みを掛け合わせてコアコンピタンスを定義

そこで私が考えたのが、「複数の強みを掛け合わせること」でした。

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前述の通り、シナノが持つ3つの技術は、それ単体でオンリーワンとは言えません。

ただ、当社並みのアルマイト加工技術とパイプ曲面印刷の技術の双方を持つ企業となると、数はグッと絞られ、おそらく当社だけになります。

そして、さらに握りやすさの技術を兼ね備えるとなれば、これはシナノ以外にあり得ません。

つまり、「アルマイト加工技術×パイプ曲面印刷×握る設計」こそが︑当社のコアコンピタンスだというわけです。

こうして自社のコアコンピタンスを定義したことで、私の視界は大きく開けた気がしました。「アルマイト加工技術×パイプ曲面印刷×握る設計」を持つ企業はシナノ以外になく、これを生かせばどんな市場でもやっていけると自信を持てるようになったのです。

どんな企業にも強みがあるはずです。

もちろん、1つの強みだけでオンリーワン的存在になれる企業はごく少数でしょう。

ただ、いくつかの強みを掛け合わせると、ニッチな分野でオンリーワンになるチャンスが生まれます。それこそが、自社のコアコンピタンスになるのです。

柳澤 光宏 シナノ代表取締役

1973年長野県佐久市生まれ。成蹊大学卒業後、日立キャピタルを経て2003年に家業である株式会社シナノに入社、2011年に代表取締役社長に就任。スキーブーム終焉で経営危機に陥った同社を、杖やアウトドア用品などの事業多角化で再建。社員の自走を促す組織文化への転換で、離職率の低い企業風土を実現。直営店展開や海外輸出にも注力し、変化・挑戦・成長を軸に企業の持続的成長を導く。

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