スキーブーム終焉でも潰れなかった老舗が見つけた「強みの掛け算」
私は大学卒業後、シナノとは別の大手企業グループに入社しました。そこでは最初、金融系の仕事を担当し、続いてメーカーに出向して社会インフラや環境関連のプロジェクトに携わりました。
20代後半になると責任あるポジションを任されるようになり、さらにやりがいを感じていました。
父からシナノ入りを持ちかけられたのは、27歳くらいのときでした。私は大企業で大きな案件を担当するのが楽しく、最初はシナノ入りの打診に戸惑っていました。
しかし、父から再三にわたって説得され、経営者という立場は誰にでも経験できるものではないと考えるようになり、2003年、29歳のときに私はシナノに入社しました。
父は私に、後継者として成長することを期待していたと思いますが、私を特別扱いすることはありませんでした。一方、私は「七光り」と揶揄されないよう、一介の従業員として業務に対して真摯に取り組み、成果を出し続けました。
その結果、周囲の人から信頼されるようになっていきました。
コアコンピタンスのヒントは顧客の声の中にある
ただ、シナノに入社し、営業を担当し始めた頃、私は大きな疑問を感じていました。
「お客さまはなぜ、シナノと商売をしてくれるのだろう?」
業績が絶好調だった頃に、何もしなくても多くの企業がシナノ製品を仕入れてくれたのはわかります。ただ、当社の経営が傾いた後は、「別にシナノでなくてもいい」と考える企業が増えたはずです。
それなのに、まだ私たちと商売をしてくださる企業がある。そこには、何か理由があるのではないか。そしてそれこそが、当社の強みなのではないかと考えたのが、コアコンピタンスを意識したきっかけでした。


















