スキーブーム終焉でも潰れなかった老舗が見つけた「強みの掛け算」
私はいろいろなお客さまに、「なぜシナノと商売してくれるのですか?」と率直に聞きました。そこでいただいたのが、こんな答えです。
「シナノさんの商品は、性能が良いですから」
「おたくはいつも、納期を守ってくれるからね」
「長い間お付き合いをしているので、その信頼関係の積み重ねが一番ですよ」
お話を伺う中で、信頼や信用、長い間積み重ねた歴史といった言葉を挙げる方がとても多かったのが、私には意外でした。私はシナノの最大の強みを、「技術力の高さ」だと考えていました。
もちろん、その部分を高く評価するお客さまはたくさんいました。ただ、それよりも、納期や約束をきちんと守る、クレームには責任を持って対応する、品質が良くて壊れづらい、といったところが支持されていたのです。
自己評価と他者評価との間には、ときに大きなズレが存在します。自分たちが強みだと思っていたポイントが他者からはさほど評価されず︑逆に︑自分たちは低く見ていたことが高く評価される︒そんなことが︑よくあるのです。
従業員が感じる「自社の強み」はバラバラ
続いて私は、従業員にも自社の強みについて聞いてみました。
例えば製造部門に所属しているメンバーは、品質(国内でていねいに作っている)がシナノ製品の強みだと答えた人もいましたし、国内で製造していたので納期と答える人もいました。技術開発部門のメンバーは、開発スピードの速さが武器であったり、開発サイクルが短いことや安全設計の品質なのではないかと答えました。
営業部門のメンバーでも、ある人はスキーポールの分野で国内シェアナンバーワンという点を挙げていましたし、別の人はブランド力を挙げていました。


















