なぜブッダのロジックとザラスシュトラの物語は3000年残ったのか? 世界を変えた「コンセプト設計」の秘密

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当時の人々は「なぜ正しい者が苦しみ、悪い者が栄えるのか」という疑問を抱えていました。これに対し、ザラスシュトラは論理的な解決策ではなく、一つの世界観を提示することで答えました。それが人類史上初めての「善悪二元論」です。

「壮大な宇宙戦争」という物語の構築

ザラスシュトラが描いたコンセプトは、まるで映画の脚本のようにドラマチックです。

• 世界観: この宇宙は、「善の神(アフラ・マズダー)」と「悪の神(アンラ・マンユ)」が激突する、巨大な戦場である。
• ユーザーの役割: 人間は、この戦争に「善の戦士」として参加するために生まれてきた。
• クライマックス(終末論): やがて善と悪の最終決戦が行われ、悪は滅び、善が勝利する。
• 報酬(最後の審判): その時、死者は蘇り、正しい行いをした者は永遠の楽園で暮らせる。

「今は苦しくても、それは悪と戦っているからだ。最後には必ず正義が勝つ」。この力強いストーリーは、不条理な現実に苦しむ人々に、生きる意味と希望を与えました。

しかし、ザラスシュトラの布教活動は困難を極めました。最初の10年間は信者獲得ゼロという「死の谷」を経験します。しかし、地方の王カウィ・ウィーシュタースパがこの教えに感銘を受けてパトロンとなると、状況は一変します。王は、この「善が悪に勝つ」という明確なストーリーを、国をまとめるためのイデオロギーとして採用したのです。

ザラスシュトラの教団自体は、歴史の波に揉まれて縮小してしまいましたが、彼が発明したこの「物語の構造」は、その後決定的な影響を残しました。

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