見切り発車の「ガソリン暫定税率廃止」で持ち上がる都道府県の「減収穴埋め」という難題…対処次第で地方の格差が広がりかねない

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ガソリンの使用度合いは地域によって異なる(写真:PIXTA)

11月28日、ガソリン税の暫定税率(厳密に言えば、揮発油税、地方揮発油税、軽油引取税の当分の間税率)廃止法案が、参議院本会議で全会一致で可決、成立した。揮発油税と地方揮発油税の暫定税率は12月31日に、軽油引取税の暫定税率は2026年4月1日に廃止されることとなった。

ガソリン税の暫定税率が廃止されると、26年度以降約1.5兆円の税収が失われる。そのうち、国が使う分が約1兆円、地方自治体が使う分が約5000億円である。

その代替財源の確保策は、廃止法案の提出時には何も決めていなかった。同法付則には、安定財源の確保について「法律の公布後、おおむね1年をめどに結論を得る」と明記している。

26年度の「財源穴埋め」は国が地方に補填へ

廃止法案の成立によって、少なくとも26年度は、代替財源がない状態で始まることになる。ガソリン税は、09年度以降使途を特定しない一般財源となっているから、ガソリン税の暫定税率の廃止によって失われる国の税収は、26年度は赤字国債によって穴埋めせざるをえないだろう。

では、26年度に地方が使う税収の穴埋めはどうなるか。

これは、地方自治体が赤字地方債を出して穴埋めするという形で対処することにはならないだろう。地方自治体側はすでに、ガソリン税の暫定税率が廃止された後で失う税収について、国の責任で補填することを強く求めている。

補填するといっても、言うは易く行うは難しである。

確かに、これまでにも国の政策決定によって地方税収が失われた場合に、国の責任で税収補填をしたことがある。例えば、24年に岸田文雄内閣が実施した「定額減税」で、国の所得税を1人3万円減税するとともに、地方の個人住民税を1人1万円減税した。

その個人住民税の減収分を、国は「定額減税減収補填特例交付金」(地方特例交付金の1つ)を地方自治体に配って補填した。減収額は、人口の多寡によって自治体ごとに異なるが、1人1万円の減税というシンプルなものだから、自治体ごとにいくら補填する必要があるかは容易に計算できた。

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