太平洋セメント、売上高1兆円への夢を捨て、利益重視の3カ年計画を策定
当時は、10年度(11年3月期)の売上高を1兆0230億円、営業利益790億円、純利益270億円と設定。実績数値と比較すれば、これが絵に描いた餅だったことは明らかだ。
11年3月期を振り返ると、先行きの見通しは暗い状況だった。この年は、単体正社員を希望退職と転籍で4分の1も減らす大リストラを実施する組織スリム化で、利益反発がやっとだった。
当時のセメント業界は、公共事業削減と、不況による設備投資圧縮で、96年度8241万トンだった国内需要が、半分程度にまで減少する厳しい状況に陥っていたからだ。
国内でトップシェアの同社は、販売数量が減少する中で、すでに10年3月に、秩父など3工場の生産中止や、500人の希望退職募集など事業構造改革を発表。この費用322億円を10年3月期末に特別損失として計上した。その翌期にあたるのが11年3月期で、これらのリストラ実施のおかげで、東日本大震災の直接被害額92億円を相殺することができた。結果として、3期ぶりの最終黒字浮上(51億円)にこぎ着けることができたのだった。
そして、前12年3月期。電子材料や建材といった多角化事業は、不採算製品の見直しで採算は改善した。セメント事業は、東京や大阪のターミナル周辺のビル建設ラッシュや、マンション開発、被災地の復旧工事など、生コンクリートの需要が集中的に増加した恩恵で、リストラ効果がより発現。営業利益は前期に比べて77%増加した。
岩手・大船渡工場も完全復旧、環境事業の収益増に弾み
このように、太平洋セメントは、生産工場の閉鎖と人員合理化という大リストラを断行して、年間160億円の損益改善を果たすコスト構造の改善に成功した。そして、この6月末には、主力の岩手・大船渡工場で、被災した焼成キルン1基が稼働、これで2系統がそろう完全復旧を果たす。