「固定資産税は600万」「今の住民はパチンコや医療・美容整形業界の社長ばかり」 日本一の高級住宅街《六麓荘》その知られざる住宅売買事情

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

反対に、「何でもいいから早く売ってほしい」という人も非常に珍しいが、いないわけではない。すでに空き家になっている物件だとなおさらだ。離婚や死別などで自宅への思い入れがなくなると、所有者は「処分」を急ぐ。

今は「SUUMO」に掲載の中古物件も

誰も知らない「芦屋」の真実 最高級邸宅街にはどんな人が住んでいるか (講談社+α新書 897-1D)
『誰も知らない「芦屋」の真実 最高級邸宅街にはどんな人が住んでいるか』(講談社+α新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

そんなタイミングで競合する不動産業者のDMに、「六麓荘で不動産を探しているお客様がいらっしゃいます」との文言が書かれているのを見たとしたら……。その人の心は揺らぎ、このチラシを投函した競合業者に相談に行く場合もある。

専任契約の有効期限は最長で3ヵ月。更新するたびに新しい契約書の作成が必要だが、高額物件であるがゆえに、3ヵ月という短期間で売買が成立する可能性は低い。買いたい人がいないわけではないが、社会的に地位のある人物となるとなかなか巡り合わない。

「昔は、六麓荘といえば不動産屋でも情報開示をしなかった。住民の質の維持もあるので、一般の人には見せないようにしていたんです。ただ、バブルが崩壊して、その慣習がなくなった。一般のカネ持ちでも買えるようになった途端、不動産屋も土地の情報をどんどん公開するようになってしまった……。ネットに公開する物件まで出ている今は、もっとひどい状況とも言えます」(別の不動産業者)

ひと昔前と違い、「SUUMO」などのウェブサイトに掲載して新たな買い手を探す中古物件も出始めているので、特定の人だけが知る、特別な情報ではなくなってきた。「六麓荘の秩序を保とう」という倫理観は前提にあるとしても、新たな所有者を選ぶのもまた売り主の裁量次第となっている。

加藤 慶 ライター、カメラマン

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

かとう けい / Kei Kato

1972年、愛知県生まれ、大阪市在住。フリーライター兼カメラマン。2002年から編集プロダクション「スタジオKEIF」を主宰。週刊誌や月刊誌、ネット媒体で事件から政治、スポーツまで幅広く取材する。YouTubeチャンネル「デザイナーtoジャーナリスト」を手掛けている。共著に『猛虎遺伝子 タテジマを脱いだ男たち』(双葉社)、『プロ野球 戦力外通告を受けた男たちの涙』(宝島SUGOI文庫)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事