天明の大火で京都御所焼失!再建計画で老中・松平定信が陥った「財政vs朝廷」のジレンマ

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縮小

これは、定信(幕府側)から関白(朝廷側)への「脅迫」と取ることもできるでしょう。もちろん、脅迫だけでは人は納得しません。定信は、御所を質素に造営することのメリットも同時に説いているのです。

御所を簡素に造営し、朝廷が質素の模範を示すべき

御所を簡素に造営することは、朝廷が質素の模範を天下に示すことになる、そうなると、これまでの奢侈な風潮を改める契機になると言うのです。

草木が萌えんとしている時に雨が降るように、社会が生き返ることこそ、宮室の善美(立派で美しい)であると定信は主張しています。この主張は、脅迫ではなく、朝廷を上手く乗せようとしていると言えるでしょう。その上で定信は、焼失以前のような質素な造りでの造営を提案するのでした。

定信の提案に、関白・鷹司輔平は「大いに喜んだ」(定信の自叙伝『宇下人言』)とのことです。定信の提案を快く受け入れたのです。その後、2人は書状でやり取りをしています。

8月上旬にも、定信は関白に御所造営案の更なる簡素化を求めます。同月、関白からの返事が。そこには、5月の会談を受けて御所造営計画をできるだけ縮小、それに即した図面を完成させたところに、定信の更なる縮小を求める書状が届いたので、困惑していることが書かれています。

定信の提案を受け入れて質素な造りで計画したところ、定信がもっと簡素にというので関白は困っているというのです。

更なる縮小は難しいところもあるが、民衆を苦しめることがないように交渉には応じるので、その際は遠慮せず申し出て欲しいとも書かれていました。つまり、少しの修正には応じるが、何とか朝廷側が示した計画で御所を造営したいと言っているのです。

朝廷の態度を受けて、定信は朝廷の望み通りの造営を決めます。しかし、余程この事が無念だったのでしょう。『宇下人言』において、今後、朝廷の新たな要求には応じてはいけない、京都所司代を通してお断りするべきだと記しているのです。定信の無念さを垣間見ることができます。

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