食品スーパーのライフコーポとヤオコーが、“独立”守りつつ、商品共同開発などで業務提携へ
特にヤオコーが得意とする提案型売り場が「400~450坪以下の店舗面積では実現できない」(川野社長)と考えているため、賃料の高い都心部では採算が難しいこと、またライフの磨きあげた効率的な店舗オペレーションが、パートのマンパワー重視のヤオコーでは確立が遅れていることなどが、直接対決が少なかった「幸運な事情」だ。だが、生き残りを賭けた業界の最後の出店競争が加速する中で、ともに現在の倍以上の収益規模を目指す両社は、組まなければいずれはつぶし合って行かざるを得ない“隣国大名”の関係にある。
直近の連結売上高は、ライフが5031億円(2012年2月期)、ヤオコーが2373億円(2012年3月期)。一方、営業利益はライフ110億円、ヤオコー107億円と拮抗する。直近の時価総額は、ライフ676億円、ヤオコーが553億円。バブル末期、1989年12月の時価総額は、ライフが929億円、ヤオコーが217億円だった。東西で大量出店が早かったライフはバブル後停滞したが、同期間にヤオコーの連続増益記録が始まっている。今2013年3月期は純益ベースで20期連続の最高益更新を予想する。
主婦のパートなど従業員の創意工夫で、人件費率が高いにもかかわらず高利益率を保ち、成長を続けるヤオコーは、中長期的に見ても単独での生き残り可能性が高いプレーヤーの1社だ。ただ、流通大手のPB攻勢が強まる中で、「調達のスケールメリットを出すには、できれば5000億円以上の売上高が欲しい」(関係者)というのが業界の一致した見方。社風を大きく変えずにメリットだけを追求すべく、「資本提携は考えていない」(川野社長)としつつも、半ば包括的な業務提携を検討する背景がここにある。
食品スーパー業界は全国的に世代交代期を迎えている。ライフ創業者の清水信次会長から「ぜひに」と請われて三菱商事から転身した岩崎社長や、川野幸夫・ヤオコー会長の息子で川野社長の甥にあたる川野澄人副社長は、業界の次世代リーダー。資本提携に発展できなかったとしても、両社の同盟は強いSM同士が無駄につぶし合う事態を避ける意味で極めて有力な提携例となりうる。大手GMS(総合スーパー)や北海道地盤のアークスがM&Aによる規模拡大に邁進する中で、自分が強いエリアでのドミナント強化に集中できるメリットがあるからだ。
戦国時代、織田信長と徳川(松平)家康の同盟は、周囲の他の大名たちが組んでは裏切る下剋上の中で、最後まで袂を分かたなかった稀有な例の一つに数えられている。ライフ・ヤオコー同盟は、その「志」で新しいSM連合のテストケースとなるだろうか。
(撮影:尾形文繁 =東洋経済オンライン)
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