「おやじに会ってきたよ」「どこのおやじ?」 女優・浜木綿子(90歳)が、息子・香川照之から《元夫・市川猿翁との再会》を知らされた日の衝撃

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だが主治医から「今亡くなられました」と告げられた。

「付いてくれていた家政婦さんが、『般若心経を始めから終わりまで唱えられ、その後、長唄を口ずさまれました』と最期の様子を教えてくれました。母が曲名を尋ねましたが、『私にはわかりません』とのことでした。母は父と出会ったころ、一緒に歌った曲かもしれないと思ったのでしょう」

最後まで粋人らしい洒脱さを貫いた父であった。

「お葬式の準備もあるので、いったん帰宅することにして、お医者さんに『今朝、庭の百合の花が三輪咲きました』とお話しし、『その百合のように、お母さまと妹さんと仲良く3人でお過ごしくださいね』と言われた時には、思わず涙がこぼれました」

「猿翁さんのお仏壇にお供えして」と頼んだもの

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2010年1月2日には母の照子が没した。99歳であった。

父も母も浜の舞台生活を支え、応援し続けた得難き存在であった。

「2人とも歌舞伎が大好きで、しょっちゅう連れ立って歌舞伎座に出かけていました。母は(十代坂東)三津五郎さんの踊りがお上手だと言って大の贔屓でした。父も母も照之と政明の歌舞伎入りを知らないで亡くなったのが、心残りです」

それから時が経ち、自宅から父の長唄の名取名「佐源次」が彫り込まれた三味線の象牙の撥が出てきた。

「『お父さんが猿翁さんにお三味線を教えた時に使っていた撥だから、猿翁さんのお仏壇にお供えして』と照之に頼みました」

小玉 祥子 演劇ジャーナリスト

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こだま しょうこ / Shouko Kodama

東京都生まれ。毎日新聞社で学芸部専門編集委員として同社や専門誌の演劇の取材、評などを担当し、2023年独立。 著書に『芝翫芸模様』(集英社)、『二代目 聞き書き中村吉右衛門』(朝日文庫)、『完本 中村吉右衛門』(朝日新聞出版)、『艶やかに 尾上菊五郎聞き書き』(毎日新聞出版)など。

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