「おやじに会ってきたよ」「どこのおやじ?」 女優・浜木綿子(90歳)が、息子・香川照之から《元夫・市川猿翁との再会》を知らされた日の衝撃
その際に猿之助が照之にかけた言葉も同誌から引用する。
「ぼくはあなたのお母さんと別れた時から、自らの分野と価値を確立していく確固たる生き方を具現させました。(中略)今のぼくとあなたとは何の関わりもない。あなたは息子ではありません。したがって、ぼくはあなたの父でもない。(中略)今後あなたとは二度と会わないけれど、そのことをよく心に刻んでおきなさい。何ものにも頼らず、少しでも自分自身で精進して、一人前の人間になってください」
どんな思いで猿之助がその言葉を発したのか。手がかりになる文章を後に日本経済新聞に掲載された「私の履歴書 市川猿翁」から引用する。
「大事な舞台の前に約束なしに来たことは役者として配慮が足りない。(中略)『息子ではない。したがって父でもない』と言ったのは、成人した人間として行動も考えもしっかりしてほしいという気持ちからだ。私は家庭を失ってから、生きるも死ぬも身ひとつの覚悟でやってきた。歌舞伎に全身全霊をかけている。だから息子も役者としてやっていきたいなら、私を父と思うな、と言ったのだ」
父子が融和し、照之がさらに大胆な一歩を踏み出すのはまだ先のことである。
最後まで粋人らしい洒脱さを貫いた父
浜の父、忠次が没したのは1996年8月2日であった。前立腺がんが転移した下咽頭がんで入院していた。
「私がお見舞いに行った時は辛そうで、『阿都子、もう喋らへんで』と口にしました。そろそろ危なそうだなと思っていた日には、着物のお見立て会に出席する仕事が入っていました」
母の照子はその仕事は断れないのかと浜に尋ねた。
「マネージャーに相談すると『お父さんがそういう状態でしたら、相手先にお願いします』と言ってくれました。先方も許してくださったので母と病院に駆けつけました」



















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