【冬用ダウン】ノースフェイスVSワークマン「価格差8倍は商品思想の違い」両方試した正直な感想
ディテールを比べると、両社の「思想の差」が浮かび上がる。ノースフェイスの袖口はしっかりとしたベルクロ仕様。風の侵入を許さない密閉感があり、極地の環境でも頼もしい。ただ、その反面、脱ぐときに少し手間がかかる。
一方、ワークマンはゴムシャーリング構造で、片手でもサッと外せる。わずかな差だが、「一日に何度も着脱する通勤服」としてはこの軽快さが効く。設計思想の違いが、日常の一動作に現れている。
ポケットの設計も対照的だ。ノースフェイスは登山用ギアを想定した大容量で、頑丈だが厚みが出やすい。ワークマンは止水ジップを採用し、スマートフォンや定期入れを入れても形が崩れない。“現場服”に由来する合理性が、むしろ日常では最適化されている。
さらに、フードを外せばシルエットはすっきりとミニマル。ビジネスカジュアルにも違和感がなく、いまや「作業着」ではなく、“都市生活者のユニフォーム”と呼ぶほうがふさわしい。
体感の差は、科学的にも裏づけがある。ワークマンの「断熱αシート」は95%以上の独立気泡率を誇り、透湿度は5000g/㎡・24h。熱を閉じ込めながらも湿気は逃す――つまり“ムレない暖かさ”を実現している。さらに、50回の洗濯でも撥水性能が維持されるという試験結果も出ている。
一方のノースフェイスは、氷点下での長時間行動を想定したGORE-TEX構造。防水性・耐久性においては、依然として頂点に立つ存在だ。ただし、街での日常使用では、そのスペックが活かされる場面は限られる。高性能であるがゆえに、オーバースペックという課題が顔を出す。
暖かさの民主化が進む
ワークマンの強みは“現場発テクノロジー”にある。もともと建設・物流・防災など、過酷な環境で働く人々のためのブランドだ。開発監修には、日本大学生産工学部の平塚弘之教授(災害救護研究所)が名を連ねる。
このダウンの出発点は、“災害現場で人命を守る服”。そのノウハウを日常生活に転用した結果が、9800円という価格に結実している。
かつて“高機能”は“高級”とほぼ同義だった。だが時代は変化している。ワークマンは現場の知恵を一般消費者に開放し、“暖かさの民主化”を進めているのだ。
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