「人気温泉地はなぜ《源泉枯渇》と誤解されたのか…?」→水位は回復していた?30年かけて守られた"名湯の真実"と湯守り人の静かな闘い
「嬉野温泉って、源泉がもうないっちゃろ?」
佐賀県の嬉野温泉。「日本三大美肌の湯」として知られる、九州が誇る名湯だ。ところが、現在私の住む福岡で嬉野温泉の話題を出すと「源泉が枯渇している」というイメージを持つ人がいる。それも無理はないだろう。「嬉野温泉、源泉の水位低下」を伝えるニュースが駆け巡ったからだ。
2025年の年明けだった。「観光客増加による源泉の水位低下」「温泉資源の限界」という言葉がテレビ、新聞に並び、「人気の温泉地・嬉野がいま、危機に瀕している」と報じられたのだ。
「ニュースだけを見て、“嬉野にはもう湯がない”と思っている方がいます。ただ、実際には、前年より5メートル以上水位が回復しているんです」
そう語るのは、嬉野温泉で最古の歴史を持つ「旅館大村屋」の代表を務める、北川健太さんだ。嬉野温泉観光協会の会長も務めている。
嬉野の湯は、静かに、淡々と守られてきた。ホテルや旅館の経営者たちが月に一度、自ら集まる源泉所有者会議では、源泉の水位と揚湯量を共有し、一つの数字の変化を前に、互いに声をかけ合っている。「湯を守る」とは、どういうことなのか。今回は、嬉野温泉の温泉資源を守る人たちの姿を、現地からお伝えする。
「温泉法」だけでは完全には温泉資源は守れない
今回報道された「源泉の水位低下」の原因は、温泉資源を守る自治の仕組みと、新規参入の事業者との間に生じた小さなすれ違いによるものだ。



















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