「壱角家」の高収益は、単なるコスト削減の結果ではない。人件費高騰の中でも、オペレーションの簡略化と価格戦略を巧みに組み合わせている。
まず、駅前の立地ゆえにアルバイトが集まりやすく、タイミーなどの短期バイトアプリとも好相性。複数店舗を持つ新宿などでは、同一エリア内で人員を融通できる。また、深夜営業では人件費上昇分を「深夜料金」として価格転嫁。客数を落とすことなく適正利潤を確保している。
さらに注目すべきは、券売機の多言語設計だ。外国語モードを選ぶと、最初に「ラーメン+ドリンクセット」が表示される。自然なUXによってインバウンド客単価を押し上げているのだ。
「取れるところから適正に取る。お客様からいただいた分は従業員に還元する。“安さを我慢で成り立たせる時代”はもう終わりです」
川島氏はそう言い切る。価格改定も他社が値上げブームに乗る前から段階的に進め、顧客の抵抗感を最小限に抑えてきた。
“効率”と“手間”の両方があってこそ…
「壱角家」で築いたのは、再現性と収益性を極限まで高めた完成された仕組みだった。だからこそ、次はあえて逆の方向──非効率な美味しさに挑む。
「萬馬軒」の味噌ラーメンは、野菜を中華鍋で炒め、香ばしい香りとコクを重ねる手間のかかる製法だ。チェーン展開の難易度は高い。
しかし、川島氏は言う。
「『壱角家』が効率の象徴だとしたら、『萬馬軒』は熱と手間の象徴にしたい。両方があってこそ、本当のガーデンのブランド群になると思っています」
外食産業の再編が進む中、ガーデンは依然として攻め続ける企業だ。再現性で築いた強固な基盤の上に、次は人の手が生む味という新しい価値を積み重ねようとしている。
「壱角家」で培った立地やオペレーションの勝ちパターンを「萬馬軒」にどう生かせるか。「萬馬軒」の味が多店舗展開でしっかり広がったときに、その答えが見えてくるかもしれない。
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