ロボット (Endhiran/The ROBOT) --次なる「インド」《宿輪純一のシネマ経済学》

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これまでのインド映画とは一線を画すCGを多用した独創的な映像が連続する。最高額の製作費(37億円)で最新技術が盛り込まれている。インドのSFジャンルも国際的なレベルまで高まってきた。それもそのはず、『ターミネーター』や『マトリックス』の一流スタッフも参加している。

インド映画の特徴は、時間が3時間程度と長く、わかりやすいストーリーの娯楽ものというところ。突然、豪華な衣装の主人公1人と多数のバックダンサーによるミュージカルシーンが出てくるが、これが必須の要素だ(マイケル・ジャクソンの踊りはインドの影響を大きく受けているようである)。
 
 インドの映画は歌と踊りと、涙と笑いと、あらゆるものを「ごった煮」のように含み、大体においてはハッピーエンドとなる。日本では「マサラムービー」と呼ばれている(マサラとは香辛料を“混ぜ合わせ”たもの)。



©2010 SUN PICTURES, ALL RIGHTS RESERVED.

 
 原題の「Endhiran」とは、英語でも、ヒンディー語でもなく、タミル語でロボットのことらしい。実は、インド映画といっても、言葉を中心としたエリアによって、ヒンディー語映画、タミル語映画、テルグ語映画、カンナダ語映画という4つがある。日本に入ってくるインド映画はムンバイ(ボリウッド)を中心としたヒンディー語映画が多く、前述の特徴を持ち、明るい。本作品は、南部のタミル語映画で、ラジニカーントもこのエリアのスーパースターである。

このことからもわかるように、インドは多数の民族・言語から成り立っている国家である。連邦公用語はヒンディー語、他に公認されている言語だけでも21もある。インドを調査していると、欧州とイメージがダブる。地方自治体は、米国と同じように「州」と訳されているが、もっと独立性が強く、言語も民族も違う。あたかも、国から成り立つ、欧州(EU)のようなものである。

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