ブッダは「最強コンサル」、空海は「天才経営者」。歴史を変えた2人が実践した「巨大スポンサー」獲得の驚くべき手法

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ブッダは、自らの「コンサルティング能力(説法)」という無形の価値を、「徳が積める」という明確な「投資対効果(リターン)」として有力パトロンに的確に提示し、「土地・建物」という巨額の「現物出資(寄進)」を引き出すことに見事に成功したのです。

空海(真言密教):「情報戦略」と「技術独占」による一点突破

「1000年に一人の天才」、空海の戦略はさらに鮮やかです。彼が狙ったのは、ブッダのような「有力投資家」ではありませんでした。

彼が狙ったのは、市場(当時の日本)が渇望していた「最先端技術(密教)」そのもの、そしてその技術の「独占輸入権」でした。

空海は、地方官僚の子として生まれ、18歳でエリート官僚養成機関である大学に入学します。今で言う東大法学部卒のキャリア官僚コースです。しかし、彼は「既存の学問では真に人々を救えない」と感じ、突然大学を中退して在野の修行僧となります。

この無職の修行期間中、彼は「即身成仏(この身このままで悟りをひらく)」を可能にする、密教という「悟りへの究極の効率化ツール」の存在を知ります。当時の日本には断片的な情報しかなく、その「コア技術」を学ぶには、本場・中国の唐に渡るしかありませんでした。

31歳の時、空海はコネを最大限に使い、なんとか遣唐使の一員として唐に渡るチャンスを得ます。彼の成功の鍵は、卓越した「情報戦略」にあります。彼はまず、徹底的な「市場調査」を行いました。

その結果、中国密教の最高権威である青龍寺の恵果和尚こそが、彼が求める「最先端技術」の正統な継承者であることを突き止めます。さらに、恵果が老齢で、その秘儀を伝授する「後継者が見つかっていない」という、決定的なインサイトまで掴んでいました。

しかし、空海は焦りません。彼は営業の鉄則を知っていました。

①スキル習得(技術言語のマスター)

まずインド人の先生につき、技術の原語である「梵語(サンスクリット語)」を短期間でマスターします。

②外堀を埋める(事前の噂づくり)

いきなり恵果に会うのではなく、長安の仏教界(西明寺など)の関係者を通じて「日本からすごい僧がやってきたらしい」という「噂」を意図的に流させます。

③満を持して訪問(トップ会談)

キーパーソンである恵果の耳に自分の評判が届き、周囲の期待が最高潮に達したタイミングで、満を持して恵果の門を叩くのです。

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