ところが人間は、目先のお得感に目を奪われて先のことが見えなくなり、結果的に不合理な選択をしてしまうという現象がしばしば起こります。行動経済学では、これを「選好の逆転」と言います。目先で得をしたいと思う心が、将来の大きな損を招いてしまうということです。
なぜ、ポイント10倍もつけてくれるのか?
このように、リボ払いには、誰もが陥りがちな心理的なわなが何重にも張り巡らされているわけですが、なぜここまでしてカード会社は、リボ払いを熱心に勧めてくるのでしょうか。
答えは簡単、カード会社が儲かるからです。
クレジットカードは、利用者、加盟店、そしてカード会社の3者で成り立ちます。それぞれにとってのメリットやデメリットはありますが、カード会社にとってのメリット、すなわち収入源は、「会費」「手数料」、そして分割払いやカードローン、リボ払いなどで発生する「金利」です。
このうち、おそらくリボ払いによる「金利」の収入が、最も効率のいい利益であろうことは間違いありません。何しろ、利用者が使った金額の15%もの金利が入ってくるわけですから。少しぐらいDMを送ろうが、ポイントを何倍もつけようが、利用者、そして利用金額が増えるのであれば、それぐらいの費用は何でもありません。
一方、利用者にとっては、利用代金に金利がかかるのは最も大きなデメリットだと言えます。カードはローンやリボ払いのような利用方法ではなく、通常の買い物の場合だけ使うということであれば、デメリットというのはほとんどありませんが、金利を払うということになると、非常に高い金利を負担しなければなりません。このデメリットは、非常に大きなものです。
常識的に考えれば、カード会社がそこまで熱心にDMを送ってきたりポイント何倍キャンペーンをやったりするという時点で、彼らにはそれを上回る大きな利益が入ってくるからだと考えるべきです。そして、その利益をもたらしているのが、利用者であるあなたが使ったリボ払いの金利なのだということに、気づかなければなりません。
誰もがみんな、自分の利益をどうすれば増やせるかを考えているわけですから、相手が勧めてきたことを単純に受け入れるのではなく、相手はそれを勧めることでどんなメリットがあるのか、そしてそれは自分にとって本当にメリットがあるのか、ということを考えるべきです。それが経済センスというものです。
どうすればわなに陥らないか
では、こうしたわなに陥らないようにするためにはどうすればよいかということですが、答えは簡単です。「リボ払いは絶対やらないこと」これに尽きます。
おかねを借りること自体が悪いというわけではありませんが、これまでお話してきたように、「リボ払い」という仕組みの中に、“借金”を感じさせないようなわなが巧みにビルトインされているということが問題なのです。多重債務者の多くが、リボ払いを発端に債務を膨らませていったという話も聞きます。
カード会社は「ご利用は計画的に」とうたっており、節度ある使い方を促すようアナウンスしているように見えますが、実際にこうした心理的なわなが張り巡らされていることを考えると、普通の人間がそうしたわなから逃れて、残高を計画的に把握しながら利用していくというのは、かなり困難であると言わざるをえないでしょう。だとすれば、そういうわなには近づかないというのが、最も賢明な方法であることは間違いありません。
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