さらに、脳活動を調べてみると、サイコパス傾向が高い人は、前部帯状回と呼ばれる、認知的な葛藤の処理に関わるとされる部分の活動が低いということもわかってきました。
例えば、「1人の命を犠牲にしてでも、5人を助けることが正しいかどうか」というような質問をされると迷うものですが、そういった高次な迷いや葛藤が起きた際に活動するのが、前部帯状回です。
ところが、サイコパス傾向が高い人は、おそらくは道徳的な葛藤が生じていないために、自分がウソをつこうか、つくべきではないかと判断するときに、本来活動すべき前部帯状回の活動が低いわけです。
そのために、通常なら葛藤して時間がかかるようなプロセスであっても、ためらいなくウソをついてしまう仕組みになっていると考えられます。
「サイコパスだからウソをつきやすい」というよりは、「サイコパスのウソのつき方は独特である」ということを発見できたことが、この研究の成果だったと思っています。
サイコパスの二因子モデル
サイコパスは、二つの因子で構成されると考えられており、二因子モデルと呼ばれています。
1つは、感情的・対人的側面の問題です。共感性が低い、罪悪感が欠如している、他者を操作しようとする、平然とウソをつくといった特徴です。
もう1つは、反社会的行動と生活スタイルに関する問題です。非行や犯罪を犯したり、過度に刺激を求めたり、他者に寄生して生活したりするなどの特徴があります。
これらの特徴に該当するかどうかは、トレーニングを受けた専門家が「サイコパシー・チェックリスト」とよばれる検査を用いて、面接をしながら判定します。
ただ、サイコパスではないと言われる人の中でも、限りなくサイコパスに近い場合もありますし、どこからサイコパスと扱うかは、非常に難しいところです。
私は、連続体、つまりグラデーションのようなものと捉えるほうがよいと思います。
サイコパスは「反社会性パーソナリティ障害」として位置付けられており、たくさんの人のデータを集めて分析することで、脳の構造やはたらき方の特徴が見えてきます。ただ、だからといって、ある一人の脳の画像を見ただけでサイコパスかどうかを判断できるものではありません。
ですから、普通の人からサイコパスまでというのは、どこかでクリアカットに分けられるものではなく、あくまでも連続体として捉えるほうが適切でしょう。
(構成:泉美木蘭)
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