刑務所の囚人たちをMRIスキャンしてわかった「サイコパス」がためらいなくウソをつく理由

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ケント・キール氏のグループでは、MRIを載せた車で刑務所を訪問し、囚人を対象として脳の画像データを収集しています。

囚人の中には、サイコパスと呼ばれる人たちが2割ほど存在します。そういう人たちの脳では、脳のどの領域にどのような反応があるのか、あるいは、領域と領域を結ぶ線維連絡がどうなっているのかなどを研究するのです。

実験では、囚人たちに、コンピューター上でコイントスの予測、つまり表と裏のどちらが出るかを予測してもらいます。当たればお金がもらえるという条件をつけて、どちらを予測したかは記録しません。そして、結果が出てから、予測が当たっていたか、違っていたかを、ボタンを押して自己申告してもらうというものです。

こうすると、本当は「裏」と予測していたのに表が出たという状況でも、「私の予測は当たっていた」とウソをついて成績を水増しすることができます。

この予測を何度も行うと、正直な人であれば、正解率は50%程度になります。健康な人を対象にした実験では、日本でもアメリカでも、大体半分ぐらいの人が正直に答えるのですが、正解率が60~70%ぐらいのちょっとウソをつく人や、80~90%のたくさんウソをつく人が出てきます。

サイコパスは素早くウソをつく

囚人を対象にデータをとる場合、当初は、「サイコパス傾向が高い人のほうがたくさんウソをつくだろう」というシンプルな仮説を立てていました。ところが、結果的にそれは支持されませんでした。

一方、ウソのつき方について、興味深い結果が得られました。ウソをたくさんついた囚人に限定して分析したときに、サイコパス傾向が高い人ほど、「私の予測は当たっていた」と回答する時のスピードが速いという結果が得られました。つまり、ウソをつく時の反応時間が短いということがわかったのです。

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