筆者の印象では、関西には世の中の人がいうところの廃墟を宝として、こよなく愛する人たちが多い。そのうちの1人に「京都一ファンキーな不動産会社」を自称する株式会社川端組の川端寛之さんがいる。
最初にお目にかかったのは細長い土地の中央に立つ3軒長屋の周囲に鉄骨の柱と梁を建て、そこにコンテナを置いた謎の空間・共創自治区SHIKIAMI CONCON(京都市中京区、以下こんこん)。壁がなくても建物は成り立つという衝撃の事実を知った時だった。
その川端さんは京都周辺でいくつかの集落再生を手掛けているのだが、そのうちでも平屋が建ち並び、昭和の下町を想起するような雰囲気を漂わせているのが京都府亀岡市大井町並河にある「A HAMLET(以下ハムレット。シェイクスピアの作品名ではなく、「とある集落」という意味)」である。
改修が進み始めている今も建物によっては逆に独特の廃墟感があり、再生といってもさまざまなやり方があることを教えてくれる。
ここにしかない風景に惹かれて大家に直談判
始まりは、川端さんが通りすがりに出会った昔ながらの住宅。
「当時、近くで霧霧(キリム。亀岡は霧のまちなのだ)という、やはり集落再生プロジェクトをやっていました。こちらは“DIY可”“小商い可”といった貸し方で、予算をかけずに古くなった賃貸住宅群を再生するもので、それを手掛けている最中にたまたま、現在、ハムレットのプロジェクトを進めている集落のすぐ近くを通りかかりました。
一目見て、ここにしかない景色に惹かれ、入居者募集中の看板を参考に大家さん宅を訪ねました。再生は難しいとしても、入居者募集の手伝いだけでもさせてもらえないかと思ったのです」(川端さん)


















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