現在ではそのうち、15室にオフィスや店舗、サロン、カフェなどが入っており、そろそろ4期目が始まる予定。1室の募集に4件の申し込みがあるなど、今では信じられないほど人気物件になっている。
そうした事例を見せて1年ほど説得した結果、ハムレットの集落を所有するご家族の同意を得て、建て替えから3年かけて13棟を再生する方向に舵を切ることに。川端さんが初めて集落を見かけてから約1年後の2022年から、ハムレットという集落名をつけて着工することになった。
誰もやらない・評価されないものを輝かせる
確かに風情がある一画だが、川端さんはなぜ、そこまでして集落を再生しようと思ったのか。
「どのまちも同じ顔になっていってしまうのが耐えられないのです。ここでしかない景色を見たいと日本で1600カ所くらい、行きたいところをピックアップ、写真を撮りに行っているのですが、それが身近にありました」
川端組は京都を本拠とする不動産会社だが、亀岡や南吹田などを手がけているのは集落、つまり面を変えられるから。古民家は再生しても「点」でしかないが、集落なら「面」になり、関わる人の居場所になる。コミュニティを育める。
また、古民家や町家はすでに評価されている。
「“どや顔”の建物再生は誰かが、あるいは誰もが手掛けたがる。それよりも、ビルや長屋のように評価されにくいものを輝かせたいのです」
普通、建物の再生は最初からどのようにするかを決めて始める。ところがハムレットでは予算だけを決めて解体しながら、感じながらどう作っていくかを決めるという、珍しいやり方で始まった。廃墟はどこまで行ったら使えるようになるか、解体後に少しずつプラスしていくことで実験しようというわけである。
また、できるだけ解体して出てきたものを大事に使うことにもした。その代表例が三和土(たたき。おおざっぱにいえば土間部分)や壁。瓦屋根を葺き替える際に出る土を再生して使うのだが、長年瓦を支えてきて固まった土をほぐして使えるようにする、敲(たた)いて床にする、壁に塗るために練るのは手間のかかる作業。
だが、ハムレットでは自然の素材を使うことにこだわった。そもそも、屋根土はこのまちの地面の土。それが50~60年屋根の上で瓦を支え、また地面に戻ってくるのである。ドラマチックではないか。
最初の計画では半年に2棟ずつ、6期かけて13棟を再生することになっており、2023年に最初に筆者が訪れた時には平屋4棟が再生、利用されていた。
1期工事分の入居者は編集・デザイン関係の事務所と住居兼アトリエとしてお針子さん、2期目の入居者が食堂と3Dプリンターで作ったステーショナリーが並ぶショップ兼ギャラリーのオーナー。3期工事の2棟は入居者募集中だった。


















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