日立が失敗続きの伊鉄道会社を買収したワケ ヨーロッパ大陸に信号と車両製造で足がかり
アンサルドブレダ社の合併前の歴史は古い。アンサルド社は、エンジニア・建築家であったジョバンニ・アンサルドによって1854年に設立された。イタリアの時の首相、カミッロ・カヴールは、当時高価だったイギリス製の機関車を輸入することに依存せざるを得なかったため、国産化を推進するべく同社を強力に後押しした。
同社の最初の業務は、海軍向け蒸気ボイラーとともに、国産蒸気機関車を設計・製造することで、1855年から1858年にかけて、最初のイタリア国産蒸気機関車を納入した。やがて訪れる2回の世界大戦中には、大砲や銃弾など軍需産業に参入するが、戦後は再び鉄道車両やその関連商品を製造した。また、電気・信号関連分野は、のちに今回同時に買収されるアンサルドSTS社として独立している。
デザインがロマンスカーにも影響
一方のブレダ社は、機械技師エルネスト・ブレダによって1886年に設立された小さな工場が始まりであった。鉄道車両の製造のみならず、金属加工業全般を業務内容とし、兵器の製造なども行っていた。航空機ファンにとっては、軍用機メーカーとしてその名を知られている。鉄道分野においてブレダ社の名前を有名にしたのは、1936年にデビューしたETR200型で、翌年の試験走行では203km/hを記録した。
また、1952年に誕生し「セッテベッロ」の愛称で親しまれたETR300型は、運転台を屋根上に持ってくることで前面展望を楽しめる画期的なデザインとなったが、このデザインは後に小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーへ影響を与えたと言われている。
その後、世界規模で業界再編が行われる中、両社は2001年に合併し、新生アンサルドブレダ社としてスタートする。
アンサルドブレダ社の取扱製品は、主にイタリア国内へ向けて出荷されたほか、北米向けにトラム車両を多く納入した実績がある。
その他ヨーロッパ域内への展開には、それほど積極的ではなかったが、なかでも人気となったのは100%低床式トラム「シリオ」で、イタリア国内各都市以外にも、ヨーテボリやオリンピック開催に合わせてアテネ市へ納入され、開業した。
また、アンサルドSTS社の自動制御システムを取り入れた自動運転システムも定評があり、まず2002年にデンマークのコペンハーゲンで採用され、その後自国ミラノ市の新路線である地下鉄5号線に採用された。
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