日立が失敗続きの伊鉄道会社を買収したワケ ヨーロッパ大陸に信号と車両製造で足がかり
しかし、それ以外の製品は、イタリア以外で多く採用されることはなかった。現在、イタリア国内の高速列車フレッチャロッサに使用される、最高速度300km/hを誇るETR500型は、トルコ国内に建設中だった高速新線でデモンストレーション走行をするなど、契約へ向けて交渉が行われたが、結局この商談は成立しなかった。
また機関車も、各国への乗り入れに対応する車両を開発し、地元のトレニタリア社にE403型として納入されたが、他国で採用されることはなかった。
すでに各国へ納入実績が多数あり、量産体制が確立しているボンバルディア社やジーメンス社の開発した汎用機関車に、特にコストの面で太刀打ちできなかったのだ。
トラブルで全車両返品も
アンサルドブレダ社のつまずきは、他国からオーダーされた新型車両にトラブルが多発したことで、徐々に深刻の度合いを深めていく。
既存車両の置き換えを目的として、デンマーク鉄道から受注した新型気動車IC4型は、これからのデンマーク都市間輸送の主力となるはずであったが、納期の遅れとコンピューターシステムの不具合により、通常運行に支障をきたすようになり、デンマーク鉄道側は、速やかにトラブルが解決されなければ、すべての契約を破棄すると最後通告を行う事態となった。結局、アンサルドブレダ側が保証金2億5000万デンマーククローネを支払うことで和解したが、同社にとっては大きな痛手となった。
さらに追い打ちをかけるように、同社はもう一つの問題を抱えていた。オランダとベルギーを結ぶ高速列車フィーラ(FYRA)は、両国の鉄道が共同出資したジョイントベンチャーの運行会社で、V250と称する最高速度250km/hの新型車両19編成がアンサルドブレダ社へオーダーされていた。しかし、やはり納期が遅れたことに加え、2012年12月の運行開始から度重なるトラブルが発生したことで、そのわずか3週間後の2013年1月に、全車両の運行認可が取り消されるという事態になった。
オランダ・ベルギー両鉄道は、残りの全車両の受け取りを拒否し、納入されたものも含め、すべてメーカーへ返品することを要求した。結局、アンサルドブレダ社は違約金の支払いと同時に、すべての車両を買い戻すことに合意、2014年には全編成がイタリアへ返品された。
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