「休めない」日本人がどうにか休むためのコツ ハイテクや知恵を駆使せよ

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一方、運動が重要という観点にとらわれすぎると、別の問題も出てくる。健康経営の継続性を考えた際、いかに適度にほどほどに“サボらせる”かも重要な視点だ。

「ほどほど」は仕事でも有効

この「ほどほど運動」の有効性は科学的にも実証されている。運動をした際に疲労の原因となる「疲労因子FF」が産出されるが、同時にこれを弱める善玉ともいえる「疲労回復因子FR」というものが産出され、程度の軽い運動ならば「疲労回復因子FR」の働きが強まるのである。

この「ほどほど」をうまく組織制度に採り入れ始めた企業も現れてきている。「頭の悪い人向けの保険入門」など独特のWEBコンテンツ企画を手掛けるバーグハンバーグバーグでは、就業中に2時間までなら昼寝をしたり、銭湯に足を運んだりすることも認められている。

こういった制度導入の理由について、代表取締役のシモダテツヤ氏は「会社員時代に、すごく眠かったときに『もうこんな眠いんじゃ仕事にならないから、いっそ寝てやろう』と思ってトイレの床で寝ていたことがあった。それがきっかけで、起業した弊社では『2時間までなら昼寝OK』というルールをつくった」と語っている。

こういった就業中の休息の有効性は、「『休めない』日本人の生産性が著しく低い理由」(10月31日配信)でご紹介した、俗に「段取り脳」と呼ばれる「ワーキングメモリ」の機能回復などさまざまな形で実証されており、未だに「休むことは悪」という概念を払拭しきれない日本においても、ようやく企業側が「休む」を有効に採り入れる兆しが見え始めたといえる。

「休みなさい」「寝なさい」というかけ声ばかりでは、何も進まないのが実情である。知恵やハイテクを駆使しつつ、最終的にはトップと現場の「仕事」「休み」に対する共通理解を作っていくのが、もっとも基本的な「健康経営」の考え方なのではないだろうか。

西多 昌規 早稲田大学教授 早稲田大学睡眠研究所所長 精神科医

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にしだ まさき / Masaki Nishida

東京医科歯科大学医学部卒業。ハーバード大学客員研究員、東京医科歯科大学大学院助教、自治医科大学講師、スタンフォード大学客員講師などを経て、現職。日本精神神経学会精神科専門医、日本睡眠学会専門医、日本老年精神医学会専門医など。専門は睡眠医学、身体運動とメンタルヘルス、アスリートのメンタルケアなど。著書に、『休む技術』『休む技術2』(大和書房)、『悪夢障害』(幻冬舎新書)、『自分の「異常性」に気づかない人たち』(草思社文庫)などがある。

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