必要なのは「外国人問題」の類型化《労働者・投資家・観光客の3分野で異なる処方箋》"強い外国人"と"弱い外国人"それぞれへの対応
外国人をめぐる課題が急浮上している。排外主義に陥らず、「外国人問題」にアプローチするにはどんな視点が必要なのか。メディア社会学が専門の成蹊大学の伊藤昌亮教授に聞いた。
「いま起きているのは、ある種のパニックだと思うんですよ」
「アフリカ・ホームタウン」が撤回された経緯
こう唱えるのは、成蹊大学の伊藤昌亮教授(メディア社会学)だ。国際協力機構(JICA)の「アフリカ・ホームタウン」事業が約1カ月で撤回された経緯がまさにそうだという。
「誤解に基づく抗議がネット上で拡散されたことで、JICAも自治体もパニックの中で撤回を余儀なくされました。
事実に基づかない情報で危機感や不安心理をあおるのが、いま最もやってはいけないことだと思います」
伊藤教授は「冷静に全体像を見るのが必要なのは、排外主義を批判する側も同様」だと主張する。感情的な対立で分断が深まるのは避ける必要があるからだ。
とはいえ、啓蒙的に「排外主義はダメ」と訴える声には、とりわけネット上で批判が集中しやすい。その中には「自分たちは排外主義ではない」という反論も目立ち、議論がかみ合っていないように映る。このすれ違いはなぜ生じているのか。
主にリベラルの側が「排外主義」というとき、念頭にあるのは現場労働を支える外国人労働者や難民といった「弱い外国人」の存在だ。
これに対し、「自分たちは排外主義者ではない」と主張する人の多くは、富裕層の外国人投資家や外国人観光客、富裕層の親をもつ一部の外国人留学生など「強い外国人」を想定している。
こうした「強い外国人」が日本で好き勝手に不動産を購入したり、野放図に観光地に押し寄せたりする現状を憂い、「日本が荒らされている」状況を止めるべきだ、と批判しているのだと伊藤教授は説く。


















