世界シェア25%! 東京応化工業が半導体「EUVフォトレジスト」で独走する理由

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当時のコダック社のフォトレジストは品質にバラツキがあり、国内半導体メーカーは不満を持っていたという。半導体の製造では半導体メーカーや東京応化のような材料メーカー、製造装置メーカーが緊密に連携し、すり合わせをする必要がある。しかし、コダック社の本社はアメリカにある上に中間に商社が介在するため、スムーズにすり合わせができなかった。

国内半導体メーカーにとって、東京応化が国内でフォトレジスト生産を開始したのは大いに歓迎すべきことだった。また、すり合わせによって東京応化のレベルも向上した。

本社のある川崎周辺には半導体メーカーが集まり、交流が活発だった。本社最寄りの武蔵小杉駅を含むJR南武線沿線と周辺には、日立製作所、東芝、NEC、富士通、OKIといった世界トップレベルの半導体メーカーが集積し、「シリコン・バレー」ならぬ「シリコン・レール(半導体の路線)」が形成されていたのだ。

すり合わせるとはいっても、販売先の半導体メーカーが上場大企業であるのに対して当時の東京応化は未上場の中小企業。両者の力関係に圧倒的な差があった。半導体メーカーから要望を聞いて、フォトレジストの試作品を提供し、厳しいチェックを受けてはつくり直すというプロセスを繰り返しながら品質を向上させていった。

生産能力を拡大し着々と成長

近年は生成AIの発展や自動車の自動運転の普及により、高性能な半導体への需要は高まるばかり。東京応化は長期計画「TOK Vision 2030」で、2030年12月期に売上高3500億円(2024年12月期は2009億円)という高い目標を掲げた。

現在、この目標達成のため、福島県郡山工場、熊本県阿蘇工場、韓国で生産能力の増強に取り組んでいる。しかし、むやみに拡大を図っているのではなく、メリハリはつけている。

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従来はフォトレジストだけでなく半導体製造装置も手がけていたが、経営資源をフォトレジストに集中するため、2023年に半導体製造装置事業を売却したのだ。この結果、東京応化はフォトレジスト専業メーカーとなった。

装置事業売却について、株式市場は「東京応化が専業となったのは、それだけフォトレジストに自信があるからだろう」と前向きに評価している。

東京応化と並ぶフォトレジストの大手JSRが2023年6月、政府系ファンド・産業革新投資機構(JIC)のグループ会社となり、株式を非公開化すると発表して以来、フォトレジスト業界は再編の機運が高まっている。

しかし、東京応化は競争力が高いため、今すぐに他社と統合する必要はない。もし再編があるとしても、東京応化が主導するかたちになるのではないだろうか。

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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