半導体製造受託(ファウンドリー)世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は10月16日、2025年7~9月期決算発表にあたり同10~12月期の予想売上高を上方修正した。7月に続く2度目の上方修正で、新たな予想売上高は322億ドル(約4兆9000億円)〜334億ドル(約5兆円)。このレンジの中央値でみた前年同期比増収率は35%となる。
これに伴い10~12月期の粗利益率は51~69%、営業利益率は49~51%との予想も発表した。
市場では、TSMCに生産委託しているアメリカのエヌビディア(NVIDIA)のAI(人工知能)チップが対中輸出規制の対象となった影響を懸念する声もあった。しかしTSMCの董事長(会長)兼CEO(最高経営責任者)を務める魏哲家氏は、7~9月期の決算説明会でアメリカのAI開発企業、オープンAI向けなどの需要急増を背景に「中国市場向けビジネスが獲得できなくとも、AIビジネスは大きく成長するとみている」と強気の見方を示した。
TSMCの業績見通しは、世界のAI用半導体の需要動向を占う「風向計」として注目されている。同社はエヌビディアやアメリカのAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)からGPU(画像処理チップ)などの生産を独占的に受託しているほか、多くのインターネット企業向けにASIC(特定用途向け集積回路)など各種チップの製造を請け負っている。
強気の背景にOpenAIの調達攻勢
魏氏は説明会の席上、「2025年もAI関連の需要は引き続き堅調で、個人用電子機器などのコンシューマー向け市場の需要は底を打ち、緩やかに回復しつつある」と述べた。注目されるのは「顧客からは生産能力の拡充を求める強いシグナルを直接受け取っており、AIビジネスの拡大に対する自信は一層強まっている」との発言だ。
中国向け需要の先行き不透明感が漂う中での強気発言の背景には生成AI、ChatGPT(チャットGPT)の開発元であるオープンAIの猛烈な半導体調達攻勢がある。同社はエヌビディア、AMDの両社に出資する代わりに、次世代AIインフラに搭載する大量のAIチップを購入するという戦略提携を相次いで結んだ。


















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