「これなら毎年受けてもいいよ!」インフル点鼻ワクチンが子どもにはメリット大な訳――注射との違いや効果、副作用について《医師が解説》

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フルミストは生きているウイルスを用いる生ワクチンですが、発症しないよう弱毒化されており、かつ鼻などの低温下でないと増殖できないようにされています。低温下でのみ増殖するので、肺の奥のような温かい場所では増えにくいのがポイントです。

注射型のワクチンとの違い

ワクチンは一般的に、ニワトリの受精卵にウイルスを接種し、卵の中でインフルエンザウイルスを増やします。2009年の新型インフルエンザ騒動を受けて、培養細胞(タンクの中の細胞)で増やす方法が開発されましたが、コスト面で問題があり、今でも鶏卵でのウイルス培養によって製造されています。

フルミストの特徴の1つは、インフルエンザAウイルスが持つ8つの遺伝子のうち、外側の目印になる2つ(ヘマグルチニンとノイラミニダーゼ)をその年の流行株に合わせ、残り6つを「病原性が弱く」「低温下でしか増えない」性質がある遺伝子を使う、いわばハイブリッドのウイルスに作り替えているところです(従来の注射型も毎年、世界の流行予測に合わせ、「その年の株」を用いて製造されています)。

もう1つの特徴は、生ワクチンであるということです。

生ワクチンでは、ウイルスを生きたまま体に取り込みます。「なぜ生きたままなのか」というと、体にとって自然の感染に近い“軽い練習”になるからです。

鼻やのどの粘膜で増えるウイルスなら、リアル感染と同じメカニズムで免疫が動くので、侵入直後から素早く反応が起こります。

また、粘膜の抗体(IgA)が立ち上がり、その場に常駐する見張り役の免疫細胞(NK細胞など)も育ちやすく、さらに血液中の抗体(IgG)や、抗体産生を指揮したり、ウイルスに感染した細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞など)も関わって、多層的な守りができます。

ただし、生ワクチンは接種後しばらく、ワクチン由来の少量のウイルスが体外に排泄される(シェディング)ことがあります。通常は短期間であり、そもそもウイルス自体に病気を起こす力がないため、害を起こすことはありません。

一方、注射は死んだウイルスの一部を用いた不活化ワクチンで、皮下注射(海外では筋肉注射がほとんど)によって注入された抗原(ウイルスのかけら)に対して、免疫細胞が反応し、IgGが作られます。IgAやT細胞の反応は起こりにくいため、感染後にウイルスが体内で増殖するのを止めることはできますが、感染そのものは防げません。

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