株価が上がっていくのは、物価上昇と円安の分、インフレとなって上昇していくだけのことであって、ドルベースでは上昇しないし、海外から見れば、日本株が上がっているわけではない。それでも、国内株式投資関係者が喜ぶのは、彼らは、日本企業の成長から株式投資の利益を得るのではなく、日経平均という数値が大きくなるから、その差額で短期的利益を得るからである。
積極財政はインフレや資産インフレを助長するだけ
1ドル=80円で日経平均2万円と1ドル=160円で日経平均4万円では、ドルで考える世界の投資家にとっては、日本企業の株価が上がっているわけではまったくない。だが、日経平均を売買しているトレーダーにとってみれば、借金して日経平均を4万円で買って、4万4000円で売り、4万円の借金を返してしまえば、4000円残る。円がどんなに安くなっていても、4000円のプラスが、マイナスになることはない。
だから、ほとんどの株式投資家にとっては、実際に日本企業が成長しようがしまいが、数値上インフレが進むだけで、儲かるのである。これが、株式市場関係者が、インフレおよび資産インフレを望む理由である。だから、彼らは、インフレで生活者を苦しめ、日本経済を破綻させても、自分たちは儲かるからハッピーなのである。
積極財政(および異次元金融緩和)でインフレや資産インフレを起こすことは、そのためだけには役に立つのである。これが、生活者と株式市場関係者、誠実な日本国民と日本を利用するだけの投資家の、積極財政、異次元金融緩和に対する意見の違いを生み出す理由の1つなのである。
まあ、日本経済が滅んでも、株式トレードで儲ければよいのであれば、積極財政を支持するのにも一理あるかもしれない。
さて、今回の本編はここで終了だが、最後にノーベル経済学賞についてひとこと。13日、今年のノーベル経済学賞が発表された(ノースウェスタン大学のジョエル・モキイア教授ら3人)。昨年のマサチューセッツ工科大学ダロン・アセモグル教授らに続き、受賞テーマは経済成長である。
昨年は、新・国富論ともいえる、制度および政治が経済発展する国と経済的に衰退する国を分ける、という話だったが、今年は技術革新がどのようにして経済成長につながるか、というメカニズムに関する研究であった。関心のある皆さんは、ぜひ、ノーベル賞のサイトにある一般用の解説をお読みいただきたい。また、私と菊池信之介氏の、アセモグル教授に関する昨年の記事「国の経済発展をもたらすのは『政治制度』ではない」(2024年10月19日配信)もご関心あらば、ぜひ。
※ 次回の筆者はかんべえ(吉崎達彦)さんで、掲載は10月25日(土)の予定です(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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