「ここが、チャイナタウンになったとしても、ゴーストタウンになるより温泉街に明かりがともり続けていた方が、まだいいです」。石和温泉旅館協同組合で理事長を務める古屋公士さん(51)はこう言って、やり切れない胸の内を吐露した。
バブル崩壊から30年、温泉街再生の主役は中国資本
かつて関東随一の歓楽街として名をはせた石和温泉は、バブル期の勢いにも乗り、1980年代後半から1990年代にかけ、最盛期を迎えた。首都圏からのアクセスの良さを売り物に、近郊では熱海などと並ぶ勢いを誇った。まだ、日本企業が会社をあげて社員旅行や忘年会、年末の納会などを盛んに行っていた時代に重なる。
だがバブル崩壊後、一気に勢いは陰る。約60軒あった組合加盟の旅館数は、今では半分にまで減った。温泉街の目抜き通りを歩いても、シャッターを閉めた店が目立つ。営業を休止したパチンコ店は、まるで廃墟のようになっていた。
弱る温泉街。買いに出たのが中国資本だった。取材班が、石和温泉にある旅館やホテルなど40の主要施設を対象に調査を試みると、中国資本に買収された施設は、温泉街全体の25%を占め、既に10軒にも達していることが分かった。

買収が始まったのは2010年代前半。後継者不足で廃業した旅館・ホテルが主な対象となり、勢いは新型コロナウイルスの感染拡大後に加速した。古屋さんは「新型コロナの影響は本当に大きく、旅館が倒産して、経営者が夜逃げしたホテルまでありました。そこに手を伸ばしてきたのが中国勢。だから温泉街が真っ暗になるよりは、もうこの際、中国人にオーナーになってもらった方が、マシかなと思うようになりました」と、振り返る。


















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