「日本の不動産はバーゲンセール」中国人に次々と買われるリゾートや温泉地帯…登記簿300件を追跡して見えた、表に出ない"静かな買収劇"の実態

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バーゲンセール――。おそらく、本当にそうなのだろう。取材班は、中国資本による地方リゾート、温泉施設などの買収が、現在どこまで進んでいるのか、各地の状況を徹底的に探ることにした。まず、都道府県などが所有する旅館業法の許可施設一覧を、情報公開請求で入手。施設一覧には、施設名や住所、許可年月日に加え、施設を所有する個人名や法人の代表者名も記載されている。この名前を基に中国資本とみられる施設を抽出した。

登記簿300件を追跡。表に出ない“静かな買収劇”の実態

だが、これらの名前だけでは所有者が本当に中国人かどうかは分からない。そこで運営会社の土地、建物を登記簿謄本で調べた。謄本には、運営会社の代表者や土地、建物の所有者の住所が記されている。その住所が中国であれば、中国資本であると判断できるわけだ。取材班が今回、取得した登記簿謄本は計300件以上に上った。さらに取材で確認した買収事案も含めて集計した。時期は、買収が特に増えた2010年以降のケースを原則、調査対象とした。その調査結果が、下記の表である。

少なくとも中国資本による主な買収は、全国39自治体の67施設に及ぶことが分かった。箱根や伊豆など人気観光地の施設がずらりと並んだ。それだけではなく、新潟県阿賀町(あがまち)や石川県白山(はくさん)市、鳥取県三朝町(みささちょう)などの、知る人ぞ知る地方の観光地も目立った。

ただ、この結果をもってしても、中国資本による買収案件は、一部ではないかとみられる。「実質的な所有者が伏せられ、登記情報と実質的な所有者が一致しないケースも少なくない」(東京都の信用調査会社)からだ。実際、取材の過程では伊豆市内の旅館などでこうしたケースを確認した。

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「伊豆―新建温泉酒店一户建上市开发商直营助力移民日本(伊豆・新築温泉ホテル 一戸建て 上場企業のデベロッパー直営 日本への移住者支援)  553万元(約1億2000万円)」

「轻井泽―东京后花园独栋现房一户建别墅助力移民日本(軽井沢・東京裏庭一戸建て住宅 日本への移住者支援ヴィラタイプ)  305万元(約6200万円)」

「东京―富士山脚下―富士缘5期酒店―带租约合同(東京―富士山麓―富士園5期ホテル―賃貸契約あり)238万元(約4800万円)」

中国の大手不動産サイトでは今なお、こうした日本の地方リゾートや老舗旅館などの物件情報がずらりと並び、活発な売買をうかがわせる。中でも中国資本の投資が旺盛なのがスキーリゾートで、人気が高いのが北海道だ。取材班は早速、現地に飛んだ。

日本経済新聞取材班 日本経済新聞社データ・調査報道センターの記者で構成する取材班

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にほんけいざいしんぶんしゅざいはん / Nihonkeizaishinbunsyuzaihan

中村裕、浅沼直樹、岩崎邦宏、綱嶋亨が取材・執筆を担当した。本書の基になったデータ・調査報道シリーズ「ニッポン華僑100万人時代」は、第2回国際文化会館ジャーナリズム大賞を受賞

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