「日本の不動産はバーゲンセール」中国人に次々と買われるリゾートや温泉地帯…登記簿300件を追跡して見えた、表に出ない"静かな買収劇"の実態

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―ホテル甲斐路のほか、栃木県那須町のホテルも買収していますが。

「甲斐路より、少し前に買いました。買収額は安かったのですが、リフォームに数億円をかけました。甲斐路はビジネスホテルのようなイメージですが、那須は1泊4万〜5万円のリゾートホテルです。2023年9月にリニューアルオープンし、食事がおいしいと評判です。こちらの客は今のところ、ほぼ日本人。那須は東京から遠く、冬は寒いせいか、中国人客はまだ1割未満といったところです」

―日本の不動産は中国人の方からみると、いかがですか。

「中国に比べて1〜2割ほど安いです。中国では土地は国の所有なので、中国人も買うことはできません。それが日本でなら中国人でも土地が買えます。長期で投資するなら、絶対に日本でしょう」

―甲斐路の経営は順調ですか。

「新型コロナの影響で、石和温泉にもほぼ人が来なくなり、中小零細のホテルはみな潰れかけました。ですが、それでも私は買収した甲斐路の経営を立て直す自信がありました。海外では今、日本に対する評価が上がっています。日本の文化が好きな外国人も多いですし、私は中国人ですが、狙っているのはインバウンド(訪日外国人)なのです」

コスト高い日本人流の経営は時代に合わない?

その甲斐路から、わずか数百メートルの場所に建つホテル「花京(かきょう)」。ここも今では中国資本の傘下に入った。やはりコロナ禍明けの2023年8月、中国籍の董保国(ドンバオグオ)社長が買い取った。30年以上も前に来日し、笛吹市内に会社も所有している。最近は日本を離れ、ほとんど中国で生活しているというが、取材には中国から電話で丁寧に応じてくれた。

なぜ花京を買収したのだろうか。すると、董社長は「ホテル経営に行き詰まった日本人の経営者が、物件を売りに出していました。私は、ホテルをリフォームして人件費を減らし、宿泊プランを変更すれば、すぐに立て直せると考えました」と、淡々と話した。

ただ、董氏は、従来の経営手法には疑問を投げかけた。「コストが高い日本人の経営では、今の時代は難しくなってきています。もう時代は変わっているのです」

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