「カフェ難民も取り込む?」日販が手がける"入場料あり"巨大書店《文喫》の秘策

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「2018年8月に開業したブックホテル『箱根本箱』(神奈川県箱根町)のノウハウも生かしています。箱根本箱は、もともと日販の保養所だった場所をフルリノベーションした施設ですが、こちらも館内に約1万2000冊の本を備え、購入することができます」

いずれも「本+ホテル」の融合だが、収益は圧倒的に宿泊料だ。それでもインテリアとしてではなく一般販売することで、本と出合うタッチポイントを増やしてきた。

「紙の本はオワコン」と言われる中で…

前述した、スマホで大半のことができるようになり、「紙の本はオワコン」と言われることもある。そうした時代性とどう向き合っていくのか。

「『すべての答えは生活者にある』と考えます。いかに生活者が変化していくかを予測し、それに応えるイノベーションをし続けるか、にかかっていると思います」

筆者はかつて、人気観光地にある有名旅館の主人に「旅館の敷地内にある喫茶室の存在意義」を聞いたことがある。その答えはこうだった。

「ネクタイや帽子のようなもの。なくても生きていけるが、あると格好がつきます」

今回、山元氏も同じように答えていた。

「本や書店もそうです。なくても生きていけるが、あれば豊かになれる。各地から提携のご依頼をいただく際に聞くのが、『書店は街づくりに必要だよね』という声です。

一方、現代の生活で『本を買う、本を読む』という行為は、わざわざ行うものなので、可処分時間の中でどう魅力を高めるかも、引き続きの課題だと考えています」

「文喫」=文化を喫するの“文化”が何なのか。「競合ではなく生活者を見ろ」というのはいつの時代も不変な事業哲学だろう。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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