「愛娘に続き、母親も亡くして…」「お前、そろそろ本気出して気入れろ」沖縄No.1芸人の地位を捨て、東京に進出した俳優ベンビーの知られざる挑戦
「ちょっと1回、自分の内面と向き合ってみようと瞑想をしばらく続けていくうちに『あれ、落ち込んでる場合じゃないぞ』みたいな気持ちが生まれ出したんです。マイナスのことが頭に浮かんだら"絶対売れる"っていう意識にすぐに変換したりして、5月くらいから徐々に元気が出始めました。今思えば、これも必要な落ち込みだったんでしょうね」
社会に出ると、通念や理性が鎧となって身体を縛り付けるためか個人のキャラクターが埋没しがちだ。それでも人は何かに従って生きていかなければならない。
人間だもの、四六時中頑張れないし、時にタガが外れてしまう場合だってある。そんなときは無理に理性を保とうとして、どこかしらに変に負担がかかっておかしくなるくらいなら、とことん落ちるのもひとつの手だ。底辺まで行けば、あとは這い上がるしかないのだから。
ベンビーは自信満々な顔付きで言う。
「不安になったからといって沖縄に戻ろうという気持ちはこれっぽっちも浮かびませんでした。だって世界のベンビーですから」

いくらネガティブマインドに浸食されようとも、根幹が朽ち果てなければいくらでも立ち上がれる。最後は、どれだけ自分を信じられるかだ。
ベンビーが所属している「オリジンlil」事務所社長兼芸人の首里のすけが、先輩であり盟友でもあるベンビーについてこう評する。
「ベンビーさんは年齢差があるにもかかわらず、若い芸人たちとも対等に接してくれ、『俺たちはまだまだこんなもんじゃない』といつも励ましてくれるんです。ベンビーさんが持っている物差しが大きいため、ローカルレベルではなくいつも世界レベルの視点を持っているのが凄い。だから『世界のベンビー』なんですよね」
母のお通夜で、父からかけられた言葉
ベンビーは東京に来てからもずっと心の奥底にしまい込んでいた思いがあった。
母文枝の急逝によるお通夜での控え室のときだ。沈痛な面持ちでベンビーがいると、父・自榮が近寄ってきて口を開く。
「お前、そろそろ本気出して気を入れろよ」
それだけを言い残して控え室から出て行ってしまった。
ベンビーはこのときの状況を、今でもはっきりと覚えている。
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